第23話 バシュラール軍との戦い

 ロックたちは、王都に到着する。ロックたちの仲間のオグルとホブゴブリンに兵たちが気づく。

 「魔物が来たぞ。門を閉じろ。」

兵たちは慌てて門を閉じ始める。そこをオーガが突進して体当たりして門を強引に開ける。兵たちは王城に向かって逃げ始める。

 「俺様と戦うやつはいないのか。」「大抵の人間はオーガが突然現れたら逃げていくよ。」

 「そうか。弱いのだな。」「街の人に手を出したらだめだよ。」「おう。分かっている。」

ロックの言葉にオーガが答える。街の人々は避難を始めて家の中に隠れる。ロックたちは真直ぐ王城へ向かう。街の人々は、ロックやディートハルトたちに気づく。

 「勇者様とディートハルト様たちがいるぞ。」「どうなっているんだ。」「ゴブリンたちは暴れていないな。」「ロック様はオルドビスの森に追放になったよな。」

住民たちは訳が分からない。ただ、もしかすると王女をいさめて、夫や息子、父たちが戻ってくるかもしれないと希望を抱く。


 門の兵たちは王城にたどり着くと団長に報告する。

 「オグルとホブゴブリンたちが攻めてきました。」「中に元勇者ロックとディートハルト様たちがいます。」

 「何、軍勢で攻めてきたのか。」「はい、数は30ほどだと思います。」

 「たった30だと。それで逃げて来たのか。守りはどうした。」「オグルに体当たりされて門を閉めることが出来ませんでした。」

団長はゾフィー女王に報告する。

 「ロックとディートハルトたちがゴブリンたちを連れて攻めてまいりました。」「どのような大軍だ。」

 「30ほどの軍勢とは呼べない勢力です。」「当然勝てるだろうな。」

 「はい、1万1000の兵でつぶして御覧に入れます。」

団長は徴兵した人々を前に配置して、正規兵は後方にいるように陣形を敷く。徴兵された人々は団長のやり方に怒りを覚えている。それと同時に初めての戦に緊張と不安を覚える。


 ロックたちは王城前の広場の入り口で止まる。ロックは並んでいる兵に見覚えがあるものがいないことに気づく。

 「ディートハルト、前衛の兵たち正規軍ではないようだぞ。」「おそらく徴兵した1万の兵を前に出して、疲れたところを正規軍で勝負するつもりだ。」

 「オーガ、耳を貸して。」「・・・俺が言うのか。」

 「戦で一番目立つ役だよ。やってくれるね。」「おう。俺様に任せておけ。」

オーガはバシュラール軍の前に出ると大声で言う。

 「戦う意思のない者は去れ!俺様は戦う奴だけを殺す。」

オーガはゆっくり前進する。前衛の徴兵された者たちは武器を捨て逃げ出す。それはだんだん広がりバシュラール軍全体で徴兵された人々が逃げだす。

 後方で団長が叫ぶ。

 「逃亡したら縛り首だ。家族もただでは済まないぞ。」

団長の声は1万人の足音にかき消される。ロックたちは、軍のほとんどが逃げ去った後を悠々と前進する。とうとう正規軍1000人が現れる。

 オーガが、ヤコブ隊長が、中西が、ホブゴブリンたちが突入する。あっけに囚われた正規軍はゴブリンたちに翻弄される。ロックたちも一塊になって突入する。

 ロックたちの目的は城に侵入して王族を捕えることである。アデリナがファイヤーボールを作りだす。それは直径2メートルはある巨大なものだ。

 さっそく訓練の成果が出ている。巨大なファイアーボールは道を作りだす。ロックはそこをディートハルトたちと走る。兵が槍でついて来るが、全てよけて兵を腕で払う。

 兵は他の兵を巻き込みながら弾き飛ばされていく。ロックが腕で兵を弾き飛ばすため、ディートハルトたちに出番はない。

 一方、オーガは巨体を生かして兵を叩き殺していく。中西も復讐心を燃やして兵を剣で切り裂いていく。ホブゴブリンたちも兵を圧倒する。

 ゴブリンたちは少数であったが、技量を体力で兵たちを圧倒して一方的な殺戮を展開する。

 ロックたちは城に侵入する。城の中はディートハルトたちが詳しいので迷うことはない。玉座の間に突入する。護衛の兵が切りかかって来るがディートハルトとヨーゼフの敵ではない。

 一瞬で片が付く。ゾフィー女王がディートハルトに言う。

 「ディートハルト、裏切るつもりか。」「ゾフィー女王、あなたはやり過ぎたのです。」

ヨーゼフがゾフィー女王を縛り上げる。ロックが言う。

 「この国は、僕が良い国にするから心配いらないですよ。」「何を言う。勇者の失格者が・・・」

ロックはゾフィー女王には理解できないのだと考える。ゾフィー女王はうつむいたまま何もしゃべらなくなる。次に王を引退したニコルの部屋へ行く。

 ニコルの部屋にはリースの肖像画が何枚もかけられている。ロックがニコルに言う。

 「まだ、懲りていなかったのですか。リースは僕の妻です。」「何をー、わしもアンネリースを愛しているのだ。」

アデリナがニコルに言う。

 「気持ち悪いわ。」「小娘、何を言う。わしの愛は純粋だ。」

ディートハルトがあきれながらニコルを縛る。そして、アリソンとセリアを捕まえる。アリソンがディートハルトに懇願する。

 「私と妹を助けてください。」「できません。」

 「そうだ、私はディートハルトの妻になるわ。そうしたら、バシュラールの王になれるわ。」「バカなことをバシュラール王家は無くなるのですよ。」

 「いやよ。助けてーーー」

アリソンとセリアは泣き続ける。ディートハルトは辛そうだった。

 ゴブリンたちは1000の兵を壊滅させる。生き残って捕虜になった兵は50人ほどだった。


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