第23話 建国祭
――――建国祭がやって来た。皇城では宴も開催され、私は皇后としてルーの隣に並んでいる。
まぁ皇帝陛下の顔も半分は隠されているから、私もなのよね。高貴な皇族の素顔を見るのは畏れ多いと言う考えからである。
まぁ私は単なる僻地の王族の末裔だが、皇后として皇族籍に入ったことは確かだ。
「いささか退屈かもしれないが」
「大丈夫よ」
気を回してくれるルーに笑顔で答える。お互い覗き込まないと素顔は見えないけど、それでもお互いどんな表情をしているかくらいは分かるのよ。
それに積極的に会話をするわけでもない。皇帝陛下の御前に挨拶に来るものもいるが、仕切るのは
皇帝陛下から直々にお言葉を授かるなんてことは滅多にないことだ。
なおルーの傍らにグイ兄さまもおり、反対側には泰武官長もいる。たまにグイ兄さまが笑顔で威圧してるなってのが、相手の様子で分かる。ほんと、あの兄は。お陰でルーに対してどんな立ち位置のひとなのか分かるけどね。まさか兄さま……わざとか?それでなくても兄さまならやりかねないが。
「早く終わらんかな」
「こら……ルーったら」
挨拶に来る客たちに聞こえない声でルーが呟く。
「俺たちはほぼここに座っているだけだ」
さらに皇后は皇帝陛下以上にしゃべらないもの。とは言え、北部から来た貴族たちは皇后である私にも言葉をかけてくれる。まぁ大抵は皇后になったことを祝福する言葉である。それから故郷から来てくれたのは。
――――ハル兄さまだ!
「少し話すか?」
「
そう苦笑するが、ルーはおもむろに口を開いた。ルー?
「領主夫妻は息災か」
「……っ、はい、もちろんでございます」
ハル兄さまもビックリしたようだが、すぐに気を取り直して答えてくれる。
両親は多分今の季節は……冬支度で忙しいのよね。こちらは秋だがあちらはもう冬目前である。春節の時はさすがに来るだろうが……今回はハル兄さまが代理で来たのだろう。まぁぶっちゃけ誰も来られなかったら最悪グイ兄さまが……いやいや、ないないない。
だけどルーったら。直接そう確認してくれるのはありがたいわ。
「セナ、何か言いたいことがあれば良いぞ」
へ……!?私!?いや……その……こ、皇后として言わないといけないわよね?ちゃんとしなきゃ……ハル兄さまは怒らないけど、グイ兄さまが……恐怖。
「北部はこれから寒くなります。どうぞお身体にお気を付けてお過ごしください」
普通の兄妹の会話なんて、ここじゃぁできないものね。ならせめてハル兄さまや両親たちの健康を願おうか。
「ありがたきお言葉です」
そしてハル兄さまが皇帝夫妻に拱手を捧げる。私は柄ではないけど、でもハル兄さまにとっては皇族への大切な礼儀。妹としてよりも皇后としてしっかりと受け取らねば。
また、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます