第19話 皇后による妃面談
――――後宮内のとある一室。
「では
「ええと……」
「
そこで
「は、はい……!その、私は箏が得意で……」
「箏ね……。なかなかすごいじゃない」
「で……でも……騒音が」
「……はえ?」
そんなに楽器音痴とか……?いやいやそれなら
「その……以前は禁止されていて……」
いや、何で!?むしろ楽器の音色も皇帝陛下へのアピールになるのでは?気に入られれば寵愛街道まっしぐらであろうに。
「耳ざわりであると
いやいや、何それええぇっ!?それ完全に
だから先日もルーに同席してもらったわけだし。
――――そもそも
「因みに
「その……お世辞にも……」
「まぁでもそんな規定は最早無効。むしろ皇帝陛下自身が妃に研鑽を積むように要求しているのだから、問題ないわ」
「……皇后さま……っ」
「ではこれからは
「……はい!」
本当に嬉しそうだなぁ。
「……あ、それと……いえ、何でも……」
うん?何かしら。
「いいわよ、必要なことなら相談して?」
「供のものも演奏をしてもいいでしょうか……」
おや……彼女のお付きたちも演奏ができるのか。さすがは楽師の名家ね。
「構わないわ」
「……あ、ありがとうございます!」
――――そして
なお、本日のおやつは貿易が盛んな
しかし気を取り直して。
「では
「……その、私は……読書が趣味です」
恐る恐る口を開いてくれる
「どんな本を読むのかしら」
「ええと……お恥ずかしいのですが……恋愛小説を」
「あら、いいじゃない」
「でも妃ですし……はしたないのでは」
いやまぁ、皇帝陛下の妃として後宮入りはしているけど。
「人妻が恋愛小説を楽しんで何がいけないのかしら。人妻だって時には乙女だったころのトキメキを得たいと思うものよ。これを浮気心だの目移りだののたまうやからは確かにいるわ。でも恋愛小説を楽しんで何が悪い!だって現実だけじゃトキメキは足りないのよ!補って何が悪いのよ!文句を言うのなら……もっと男が女性をトキメかせる努力しなさい!」
「……皇后さま……っ!」
いつの間にか2人立ち上がり、
「そ……その、それで皇后さま」
「うん?」
「実は最近は、自分でも……書いておりまして」
何と……っ。
「なら、それ出版しましょうか!」
「え……?」
「後宮から出版してはいけないと言う決まりはないわ!そりゃぁ検閲は受けだろうけど、これもバズれば大事なウリになるわ!」
「……は、はい!」
よし……今からでも
――――しかしその晩、ルーが妙にしょんぼりしていたのだが……何故だろうか?
そうしてまた明くる日。本日は
因みに本日のおやつはミアお手製のお米を使った煎餅である。
パリパリ食感とあまじょっぱいその味に
「こら、ルン。
「噛ん……?」
うぅー……共通語が難しかったかしら。
こう言う時ルーがいてくれれば説明してくれるのだが……忙しいのにおやつタイム案件で呼び出すわけにも。
「もぐもぐ、その後……お茶!」
「……ワカッタ!」
良かった、何とかやってみるものね。
それでは気を取り直して。
「では
「ええと……私は……」
「んーと、武芸とか楽器とか、読み物とか何か好きなことや得意なことはあるかしら」
いや、武芸はそうそうないと思うが。
「……な、何も……」
え……っとぉ……っ。
「その……面倒見が……良いかと」
「私は……何も……何もないのです」
「そんな……何かあるわよ」
悲愴感にうちひしがれた表情を浮かべる
「本当に何もないのです。後宮入りしたのだって、単に南部の貴族と言うだけ……陛下が南部の貴族出身なのでその……推薦で……っ」
「じゃぁ探すのよ!そうね……他の2人に楽器を習ってみたり、読み物を勧めてもらったらどうかしら!?私は武芸を教えるわ!
「分かりました、セナさま!」
「で……ですが……他妃からなどと……良いのでしょうか……」
「同志がいることは心強いことよ!そしてライバルがいるからこそ健全に競い合い己の技能を高めることもできるわ!だから……やりましょう!」
「……こ、皇后さま……っ」
その日から
そうして、2週間後。
「……で?どうだったんだ」
夜、寝所にて。ルーがいつものように訪れて問う。
「……全滅だった」
こんなことって……っ。
「何も功績を残せないのなら……降格……つまりは城市行きだな」
ルーが冷静に告げる。そうね……それがルールでありルー公認の御達しなのだから仕方がない、が……。
「ルーのバカ!諦めなければどこかに活路があるのよ!んもう知らない!今日は
今の私には
「は……っ!?ちょっと待て、セナ!?」
ルーが伸ばしてくる手を振り払う。
「……セナ」
と、そこに当然のようにいるグイ兄さま。げ……、兄さまに見られたのなら……怒られる!?
「ま、今回はルーが悪いねぇ。行ってよし」
「……兄さま……!ありがとう兄さま!」
「セナ――――っ!?」
ルーの叫びに振り返ることなく、私はマイ
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