第11話 皇后
――――翌朝。
「よくお似合いでいらっしゃいますよ」
「ありがとうございます、
朝起きれば早速ルーが送ってくれた礼装が届いており、リーミアが張り切って着付けてくれた。
「では行ってきます」
「
「うん!いってらっしゃい!
元気に見送ってくれる
本当に、順風満帆ね。
奥後宮からは本城と通じる通路を通る。皇后が皇帝陛下に謁見したり、皇后が必要な公務に出る時はここの通路を使うのだ。そして皇帝陛下
奥後宮と本城を行き来する際に使うのもこちら。ここの案内は後宮にも入れる宦官が務めてくれる。後宮からは締め出されても、本城の方では勤めを続けていたようである。今では再び入れるようになったから、ルーの身の回りの世話も担っている。
そうして謁見の間の前でウーウェイが見送ってくれる中、私は
そして拱手を捧げれば、皇帝陛下が玉座につき『面を上げよ』と声がかかる。皇帝陛下の顔は面布で目元が見えないが、これは皇帝陛下の目を直視するのが不敬だと考えられているから。それはあくまでも形式的なことで、ルーとして後宮に来る時は普通……あれ、みんな頭を垂れていなかったかしらね?
それはともかく。面を上げれば、皇帝陛下の姿と、その左右に立つグイ兄さまと泰武官長。それから
「よくぞ参られた、セナよ」
私には苗字がないので、セナだけだ。
「さて……それからもうひとりここに」
そうルーが告げる。うん……?もうひとり……?気が付けば兄さまの姿がない。気が付いた時には、不快な声が響いていた。
だが猿轡を嵌められしゃべることができない。その第2妃の縄を握るのはグイ兄さま 。変わり果てた姿の第2妃を、臣下たちの冷たい目が射貫く。もはや妃としての面影などない。
「聴衆は多く居た方がよい」
一体何をする気なの……?
「さて、話を戻そうか。セナよ」
「……はい!」
「そなたは我が皇后とする。与える部屋は皇后の間だ」
「へぁ!?」
いきなりすぎて間抜けな声が出てしまった。だが横から感じ取った兄さまの殺気に慌てて居ずまいをただす。
「それから
「はい」
そしてちらりと横で何かが揺れたのを見れば、第2妃……いや元第2妃・
「そんな……何でその女が皇后なの!?それに第2妃がその先帝の残り粕だなんて……!皇后は……皇后は私よね!?陛下ぁっ!」
「ほう……?皇帝の命に逆らうか」
ずしんと重みのある声が響き、
「では……皇帝に逆らった謀反者への罰を」
つまりそれは処刑であるが、この場で兄さまが手を下さないと言うのならば晒し刑である。
「わ、私は
「安心せよ。その
ルーが……皇帝陛下が冷酷に嗤う。彼女の実家の後ろ楯など意味はない。
「皇太后陛下が……」
「それが何だ。血縁もない他人でしかない」
「て ……ですが先帝陛下の……っ」
「今は私が皇帝だ」
その前で先帝のことを持ち出すとは。よほど命が惜しいのか。そんなにも皇后になりたかったのか。しかしその口は再び塞がれ、屈強な武官たちが彼女を処刑台へと連行していくだけだ。
「さて、皇后よ」
「……はい」
ここでいいえだなんて言えるはずもない。
「私はお前を迎えられて嬉しく思う。皇后として、国のため、そして故郷のため……励むがよい」
「はい、皇帝陛下」
確かに皇后ならば……そうよね。国のためにも故郷のためにもできることはある……!けど……私は別に皇后になりたかったわけではないのに……何でこうなったのかしら……。それだけが、解せぬ。
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