十二の誓い

佐原 零

第1話 プロローグ

《この世の頂点にたつ者は一体誰だろうか?》


国王?皇帝?はたまた、神?

この答えは人によって違うと思う。

政治的観点で答える人もいれば、宗教的観点や魔法的観点で答えを出す人がいるだろう。

この問いは、デジール教の聖書の初めに書かれている問いだ。

そして、聖書にはこの問いについて、

《全ての答えは東の果てに存在する》

と記されている。

それ故に、多くの君主や探検家、宗教家が東へ遠征した。

だが、東の果てを何百年も探索しても誰も答えに辿り着けなかった。


╶ ╶ ╶ ╶ ╶ ╶ ╶ ╶デジール歴812年╶ ╶ ╶ ╶ ╶ ╶

エストフィン王国

王都 ベルモンテ

王立中央魔法学園 正門


「貴方様が、アリス第2王女殿下ですか?」

「ええそうよ。でも、アリスでいいわ。学園の中だけでも王家という肩書きから逃げたいの。」

「そう…でしたか。失礼し──」

遮るようにアリスが言う

「敬語もやめて。いくら護衛といえど、私達は今日から友達でしょ?普通の友達は敬語で話すの?」

「…違う」

「そうでしょ?私は、貴方のことをリーザと呼ぶ。それでいい…?」


不安げにそう問う少女の目は明らかに動揺していた


「アリスは面白い方なのですね。」

リーザは微笑む

アリスは恥ずかしいそうに

「しっ、仕方がないでしょう!あんまり同世代とこんなに話したことないし……

どうやって話せば…」


時代のカギとなる二人の出会いはここであった。


「さ!せっかくの入学式に遅れてしまいますよ!」

アリスはリーザの手を引き学園の中へと入っていく。リーザは転けそうになりながら、アリスについて行く。

しばらく進むと、かなりでかい教会に着いた。ここで、入学式が執り行われる。

中に入ると学園指定の黒紫のローブを着ている大勢の生徒がいた。


会話をしている人達もいれば、静かに本を読む人、じーと、その時を待つ人、それこそ、十人十色だった。

アリスが懐中時計を取りだし、

「まだ、少し時間がある。よかったよかった」

「初日から遅刻にならなくてよかったわね」

「ほんとにそうだよ!」


そう言いながら、二人は後ろの方の椅子に腰をかける。教会を見渡すと、どうやら三階まである。高さにして約30mはあると思う。中央にある三つのステンドグラスは蒼く、強く輝いている。次第に、立ち話をしていた生徒たちが椅子に座り出す。

…そう、時間がやってきたのだ。


教会が静寂に包まれる。気がつけば、ステンドグラスの下に赤色のローブを羽織った、初老の女性が怪しげな笑顔を浮かべていた。


「ようこそ!!少年少女諸君!!

ここは歴史ある王立中央魔法学園だ!!

私は学園長マティルダ・クローバー!!

緊張している人も、やる気に満ちている人もいるでしょう。けど、みんな同じスタートラインにいる。魔法をどう思っていようが、この学園での時間が君たち一人ひとりの魔法を作っていく。この学園で、君たちは、魔法とはなにか?魔法とはなんためにあるのか?魔法の価値とは?きっと、様々な疑問を解決し、心に刻むでしょう。以上で学園長の挨拶とする!!」


その声は耳によく声だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る