必要な会話と答え探し
はぁ。なんであいつと話さなきゃいけないんだろう。
本当は謝りたくなんかない。そもそもオレなにも悪いことしてないし。…けど、せっかくえるがオレの為に話す時間を作ってくれたし。行かなかったらえるを悲しませることになる。そっちの方が、嫌だ。そう思って気持ちを切り替えようとしてもなかなか上手くいかない。だって全部あいつが悪い。あんなこと言うから。……思い出しただけであの時と同じ怒りが湧いてくる。やっぱり一発殴っとくべきだった。……ダメだ。落ち着かないと。今はえるを待たせてる。そう、えるを待たせてるんだ。さっさと謝ってえるのところに戻ろう。
…待っててえる。すぐ終わらせるから。
「なんだよ。話って」
「………。…………この前は…殴ろうとして………ごめん」
「……は?」
「謝ったからもう帰る」
「…いや、おい。勝手すぎるだろ色々」
「えるが待ってる。邪魔しないで」
「はぁ…。お前、ほんとガキだな」
話が終わってその場から立ち去ろうとした。その時
「えーもう終わり?もっと面白い話でもするのかと思ったのに」
不満を口にしながら誰かがやって来た。こいつ誰だっけ。
「…新山、お前盗み聞きしてたのかよ」
あ、えるの友達。そう思い出した時には自然と体が動いていた。もうここに用はない。戻ろうえるのそばに。踵を返して立ち去ろうとした。けれど、その進路はいつの間にか塞がれていた。なんでこいつオレの目の前に。さっきまであいつと話してたのに。無視してそのまま進もうとした。けど
「ね、えると付き合ってないってホント?」
その言葉が耳に刺さり、体が固まった。何も言葉が出ないまま立ち尽くす。聞こえてきたのは
「へーまだ付き合ってないんだ」
もっと聞きたくない言葉だった。
「言っとくけどお前が入る隙間は無いから。そもそもえるはお前になびかない。近づかないで」
えるはオレの。絶対渡さない。
「言われなくてもわかってんだよ。んなことは」
「……分かってるなら、いい」
…やっぱり早くえるの所に行こう。もうこれ以上こいつと居たくない。そう考えた時、えるの言葉が再生された。
『私以外の人に頼ってみるのはどうかな?』
さっきのは、家にいる二人にってことだったけど…こいつらも少しは役に立つのかな。オレには分からない愛される方法………。
「…聞きたいことがある。人に好かれるには…愛されるには、どうしたらいい?」
「それってもしかしなくても、えるのこと?」
「そうだけど、早く答えて。無いなら帰る」
やっぱり時間の無駄だったと思いもう一度立ち去ろうとすると
「まあまあ、話聞いてあげるから。えっと、えるに好かれる方法?だっけ。うーんやっぱ思ってることは素直に言った方がいいんじゃない?好きとかさ。えるってそういうの弱そうだし」
「思ってること……」
「そ。あとは…」
「そんなんいちいち考えることじゃないだろ」
聞いてもないやつが突然話に割って入ってくる。
「は…?」
「今この時間だって無駄だし、あれこれ考えるよりさっさとあの子のとこ行けよ。結局それが一番だろ」
「……そんなの言われなくてもわかってる。でも、オレは……」
えるに、愛されたい─────。
「うーん。それもいいと思うけど、それじゃあ今までと変わんないから聞いてるんでしょ?だったら今まで通りの中で違うことすればいい」
「違う…こと」
「そう。さっき言ったみたいに好きって思ったら素直に言うとかね。結局まっすぐ言われるのが一番効くの。特にえるみたいな子はね。多分すぐ顔赤くなるよ」
まっすぐ、素直に…。いつもはえるといるだけで満足しちゃうから、かわいいとか好きとか言わなかったけど言った方がいいんだ。その方がえるも振り向いてくれる。すぐにできるかは分からない。それに……あの二人にも聞いて何が正解かしっかり考えよう。
……まあ、お礼くらいは言っておこう。えるに何か言うかもしれないし。
「……一応、お礼は言っとく。……ありがと」
えるの友達にそう言うとものすごく驚いた顔をされた。それから
「あとお前、えるには近づかないで。オレのだから」
去り際、三浦ってやつにもう一度釘を刺す。もう二度とえるを好きとか言わせない。言い終わると気分がすっきりとした。体も軽くなり、えるの元へ向かう足が心地いい。待っててえる。すぐに行くから。
「はいはい。さっさと行けって─────もういねぇし」
俺を睨みつけながら『オレのだから』と言い残し去っていったあいつの態度に腹が立つでもなく呆れた。腹が立ったのはむしろ自分の方だった。
あーあクソが。付き合ってもないのに見せつけられて、俺のこの気持ちはどうすりゃいいんだよ。と、そんな気持ちがまだ浮かんでくる自分に、どうしようもなく腹が立った。そんな中
「諦めるの?えるのこと。このままだとホントに入る隙間なくなっちゃうよ?」
「…いいんだよあれで。どうせ元から無いものだ。今後も隙間なんてできないだろあれは」
俺が一番分かってる。あの顔は、心配とか不安とかそなんだけじゃない。誰かを本気で想ってないとしない顔だ。ま、本人が気づいて無さそうだから入り込もうとしただけだったけど、こんなに…誰かを好きになるとは想像もしてなかった。……今後の告白はもう少し言葉選んで断るか。いつか、忘れる日が来るまで。
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