第四話 難題と乱入者
そんなこんなで喫茶店での約束から翌日。私立寮優高校2年1組の後ろ窓際の席二つ。昨日の疲れが残って机に突っ伏している戌亥涼介とその隣に座って心配そうに見ている黄咲アンナは今後について話あっていた。
「そんで?今後二人で悪魔を倒しつつアンナのお仲間探しを続けるのは良いとして・・・やっぱあんまり疑われない様に作戦会議する場所は必要だと思うだよ。そこんとこどうする?」
机に突っ伏していながらも割とはっきり聞こえる様に喋る戌亥を見ながらアンナは少し考えてあまり大きくない声で喋る。
「そうね・・・ひとまずはあの喫茶店で良いとは思うけれど・・・流石にいつも二人で喫茶店に入るのは良くないわね・・・お金もかかっちゃうしねぇ・・・・・・。そうだわ!部活を立ち上げるのはどうかしら?部活動なら学校内で解決するからお金もかからないし不自然じゃないわよね。どうかしら?」
「なるほど・・・部活か。確かに良いかもな。俺は帰宅部だし、アンナは転校したてだから当然帰宅部だしな。それなら良いかもしれない。だがしかし、問題があるんだよなぁ・・・」
そう言うと胸ポケットから生徒手帳を取り出し、パラパラめくり一つのページで止め、アンナへ見せる。アンナは覗き込む様に見て、そこに書いてあることを音読する。
「えーと・・・?『部活動作成について。まずは同好会からの作成となる、同好会作成の条件は以下の通りである。①最低三人以上いること②顧問となる教師がいること③生徒会に申請書を提出すること』と。えーと・・・つまり?」
「俺たちが部活・・・もとい、同好会を作るにあたって超える壁があるってことだ。まず、俺たちは二人だ。つまりあと一人、誰か誘わなければならない。次に顧問。これはまぁ誰か適当に探せばいるだろうし適任そうなのがいるから問題ない。そして最後。生徒会への提出。これもまぁなんとなくはぐらかせば大丈夫だ。当面の問題は、後一人の部員確保、だ」
キーンコーンカーンコーン
と、ここまで話したところでチャイムが鳴る。二人は一旦話を中断して前を向く。そして昼休み。二人して屋上へやってきて朝の会議の続きをしている。ふとした瞬間。校庭から、校内から聞こえていた音が消え失せる。流石に違和感を覚えた二人が空を見上げると赤く染まっていた。
「おい、アンナ。この空の色ってさ・・・」
「えぇ。現れた様ね・・・それも、あそこに」
「くっそ!昨日の今日でもう次が現れんのか!」
空を見上げていた戌亥と違い、アンナは校庭を見ていた。そこには、黒いモヤが漂っていた。急いで校庭へ急行すると、モヤは実体となって形を成す。その足元にはやはり紋様が浮かんでいた。紋様の上に立つのは前日の悪魔と違い、人の形を成していなかった。その姿は鳥。鋭い剣を持つツグミの姿だった。
「ねぇ・・・戌亥君。アレは何かわかる・・・?」
「あぁ。あの紋様に剣を持つ鳥の姿。間違いないよな。アレはソロモン72柱の一柱。名はカイム。序列は53位。地位は総統。確か、未来を予告し、あらゆる音を理解することができた筈だ」
その言葉を聞き終えてから紋様の上に立つ悪魔、カイムは一礼する。
「ほぉ。私を知っているとは、貴様は見込みがある様だ。左様。我が名は《カイム》!偉大なる王にお仕えする悪魔が一人なり!さぁ、オルレアンの聖処女よ!我らが王の為。その命と能力、貰い受けよう!」
剣を抜き放ち、高らかに叫ぶ悪魔を見続けるアンナは前に出る。
「戌亥君。わかってるとは思うけど、下がっていてちょうだい。・・・・・・さて、と。それじゃあ」
「信託の乙女」
《オルレアン》
十字架が輝く。少女を光が包み込む。光が晴れた時、昨日見たまんま。軽鎧に剣を付け、手に旗を持つ姿があった。その姿を見て悪魔は喜んだ。
「よぅし・・・では、いざ尋常に・・・勝負!」
悪魔は叫ぶと同時に駆けた。流石、鳥の姿だけはあり、ものすごい速度だった。特性によって未来を視ていたアンナであっても、対処が難しかったのだ。かろうじて剣を穂先で弾き返したと思ったのも束の間、次の攻撃が襲いかかる。未来を視て対処しているはずのアンナが後手にまわされている。それを見た戌亥はアンナへ叫んだ。
「アンナ!そいつはさっき言った通り未来を予告する能力を持っている!つまり未来視ができるのと同じ事ができる!お前の動きを先読みしてそこに合わせてるんだ!」
それを聞いたアンナであったが、どうする事もできなかった。ただただ防御に回され、悪魔の剣を受け続けるだけだった。戌亥は歯軋りをする。何か、何かできないかとあたりを見回そうとした時、背後で声が上がった。
「え、えぇ!?何アレ・・・剣を持った鳥と・・・転校生の・・・黄咲さん・・・?」
驚いて後ろをみる。そこに立っていたのは、私立寮優高校生徒会会長。「姫夜麻 橙花」の姿があった。
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