第25話 万年アンカー
いつだって、アンカーだった。
いつだって、最後のバトンを受け取っていた。
「あとはよろしく」
受け取って、走って、走って。
でも、このバトンを次に受けてくれる人は居ない。
なのにゴールする前にまた、
バトンがまわってくる。
気がつけば、手に抱えきれないほどのバトンがあった。
バトンごとに、ゴールが違う。
走って、走って。
とにかくゴールに着けば、
バトンは消えてくれる仕組み。
走れない時もあった。
歩くしかない時もあった。
途中でしばらく寝ていたことも。
それでもどうにかゴールして、
バトンを消して行った。
「もう、受け取れないから」
差し出されたバトンを、断ることも覚えた。
はるかはるか遠くの方から、
バトンを持って来る人のことを、
心配するのもやめた。
すでに消えたバトンを、
本当に消えたのか確かめるのもやめた。
なるべくトラックの外側に居るようになって、
あの頃よりは楽になっているはず。
なのに
なのにまだ、
バトンをいくつか抱えている。
もう、捨ててしまいたいのだけど、
どこに捨てていいのか、
どうやって捨てればいいのか、
分からない。
それを考えると、また
眠れなくなる。
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