第8話 可能性
この未曾有の危機に独自の対策を検討している人々がいる。諦めることを諦めた人々だ。家族も、恋人も、友人も、大切な人が居るはずなのに帰ることもせずに。立派すぎて感謝の言葉も見つからない。
何か対策は?少しでも可能性あるなら全て試してみるべきだと。
専門家のアドバイスによる可能性をリストアップして実行するための準備を検討している。
ただ、その可能性が見当たらない。これ程までに無力なのか。ここまでの文明が全て終わってしまうのを待つだけなのか。
それでも日々、可能性を探している。この場所はもちろん国も全力で支援している。
それでも少しずつ、少しずつ、帰る人達が増えてきた。やはり最後は大切な人と過ごしたいんだ。
その頃、
遥と海に来ていた。
青い海と空。快晴だ。もう既に別の場所では何らかの影響が出てるかも知れない。こればかりは未知数だ。
信憑性のない情報ばかり錯綜しているこの世界は自分達を信じて行動するしか無い。
遥と見る海…最高のロケーションだ。ここまで自転車でよく来たものだ。凄いエネルギーを使って、汗だくで着替えたい…せめて服を買いたいがお店もやっていない。
遥は砂浜に座り、こっちを向いて笑顔で話し出した。遥も汗だくだが。優しい声で、
もし、この世界が、私達が生きていたら、付き合おうよ!!と。
その言葉に救われた。
遥を自然と抱きしめた。奇跡の出会いを経験していたなんて。今頃気がつくなんて、とんでもない大馬鹿野郎だ。
遥は手を背中に回してきて、ボソッと。
汗だくだね、でも、嫌じゃない。
生きているからだね、と。
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