第71話

「ここに居たのか」




入院中、一度も会わなかった。

だけど同じ病院にいるという事はスバル君やカイに聞いていたから知っていた。


だけど、訪ねて来るなんて意外だった。




「病室は、なんか辛気臭くてな。ま、ここもだけど、少し増しだから」




レオは喉を狙われて殴られたり蹴られたりして、危うく声を奪われるところだったらしい。


幸い鎖骨を骨折するだけで済んだけど、俺と同じように意識を取り戻すのに時間がかかったせいで


検査などに時間を取られて入院が長引いたらしい。





「退院すんのかよ?」


「あぁ。病室に行ったらお前の兄貴に会った。いないから、多分屋上だって言ってた」


「そっか。スバル君来てくれたんだ」




レオの方に体を向けないまま、俺は遠くをみたまま呟いた。






「聖夜は、どうなった?」





声が震えた。






「失明したってマジ?…そんなの、バンドマンとして…終わり…って事かな」





エルフのメンツも皆重症で、デビューは白紙になったと聞いた。





聖夜は生きてる。


…だけど、バンドマンとしては死んでしまった。






…スバル君の言葉は、的確だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る