Burning love

PROLOGUE

第1話

唇から落ちた煙草が、血の海でジュッ――…と朽ち果てた。



降り続く夜の冷たい雨の所為で感覚の無くなった指先は、彼の蒼白いその頬を撫でる事もままならなかった。



名前も呼んでも動かない彼の頬から口元に、あたしが撫でた跡に血の線が走る。



喉まで響く自身の鼓動が恨めしくて、強い風に巻き上げられた髪を耳にかけながら、あたしの名前を呼び返さない彼をかじかむ手で抱き締めた。







此処まで届くあの街の錆付いた光――…。








聞こえる筈の雑踏が聞こえないのは、この雨の所為か、あたしの悲鳴の所為か。



ーーー……はたまた、あたしもこの血の海で溺れているからなのか。








メッキで塗り固めた偽りの強さは、憎しみの雨で剥がれて、雫になって流れ堕ちて行った。




燃えるような愛の行き場も、示してくれないままにーーー。

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