第2話

インターホンが鳴る。



ネクタイを締めながらモニターに近づくと、部下の塩崎コータのいつもの無表情な面が、頭上と正面と、左右の横顔と、後ろ姿の5方向からカメラに移されていた。



ドアを開けて、塩崎がエレベーターに進むのを確認すると俺は洗面所に向かい、鏡でもう3日はまともに睡眠をとっていない自分のやつれた顔と対面する。




黒髪に黒肌に顎髭。少し長めの髪をジェルで適当に後ろに流す。首にはシルバーのネックレス。耳にはスワロフスキーのピアス。こんな見てくれじゃ、はたから見たら俺もヤクザと変わらないな。と苦笑する。




歯を磨いてリビングに戻ると、音もなく家の中に来ていた塩崎が黒い大理石で出来たカウンターキッチンの前あたりに、SPの様な立ち方で俺を待ち構えていた。



「ソファに座ってて良いんだぞ?」



煙草に火をつけながらリビングに現れた俺に、塩崎は無表情のまま会釈した。塩崎のシワ一つ無いスーツが擦れる音が静かなリビングに響く。



「おはようございます」



金髪の短髪で派手な出で立ち。整った顔だけど出会ってからこの男はニコリともしない。ただ時間にも仕事にも正確で真面目な男だ。

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