異世界にTS転生したと思ったらゲームの悪役貴族のメイドだった〜しかも悪役貴族は転生者らしい〜

波利非之助

第1話

つまらない。

いつもの様に勉強をしてバイトに行って、少ない余った時間にラノベを読んで、ゲームをして。

今日も今日とて2階にある自室でラノベを読みながらため息をつく。もう外は茜色と黒色のグラデーションだ。


俺の人生、こんなはずじゃなかった。こんなラノベとゲームしか楽しみのない奴になる予定なんてなかった。

もっともっと楽しい人生に…


でも恵まれているのは分かる。優しい両親、優しい友達、不自由はあまりない。

然しまだ足りない、自分自身で誇れるところが。

無い物ねだりにはなるが、何でもいいからある程度の人に勝てる特技、称号が欲しかった。

しかし、絶対音感はもう取れない、神童という名はもう取れない、小さい頃から運動してればもっと…

分かっている、これはタラレバだ。

どうせ戻ったって何も変わりはしない。

きっと大人になったらこのときの事を後悔するんだろう。

あのとき無い物ねだりじゃなくて未来を見据えて努力しておくんだったと。

あー、駄目だ。未来に希望が持てない。

異世界に転生したい。そしたら魔法とか剣とか沢山極めて最強に…なんて。ラノベみたいな展開を期待してる。

異世界はない。でも夢はみたい。矛盾を抱えないと生きていけない。

何て醜悪なのか…そんなのもうどうでもいいか。

考えるのをやめよう。ゲームでもしようか。


と、思い立ってから思い出す。

「あ、昨日一階においてきちまったな…」

面倒くさいが取りに行く事にした。

部屋を出て、左に曲がれば階段だ。

早く取りに行こう。


階段に足をおろしたその瞬間、視界が揺れた。地面を踏みしめている感覚がない。

続いて足、背中、そして頭を打つ感覚があった。

それから暫く打つ感覚があり、ようやく収まった頃には頭がくらくらしていた。

あぁ、俺は階段から落ちたのか。

何処か他人事のようだ。起き上がってゲームを取りに行こう、と思ったのも束の間。

起き上がれない。足が動かない。

何かやっちゃいけないとこやっちゃったかな。

仕方ない、確か母さんが台所で料理をしてたはずだ。

声を出して助けを呼ぼう。

「ぁ……ぅ…」

あ?声が出ない。何でだ?しかも、頭がもっとくらくらして…揺れる目の前に急いでこっちに向かってくる母さんが見えた。

確かに階段から落ちる音は大きかっただろう。

まぁ気付くのは当たり前か…


ゴメンな…母さん。先に逝くかもしんねぇわ。

電話しないでいいから。もう駄目っぽいわ。

ちょっくら賽の河原で石積みでもしとくな。

あれ?賽の河原って入場出来んの何歳までなんだ?あぁ…目の前が暗い…マジでヤバイ…死ぬってこんな感じだったのか…俺…死に様だっせぇ…

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