第18話 心地よい耳打ち

以前の様にスパゲティを食べているが、この場合異なるのは四宮が隣で食事をしている事だ。血液ではなく、トマトジュースだそうだが。赤い血液を飲む手を止め、錠剤を小箱から取り出した。


「それって中和薬ですか?」


「はい。よくご存知で。これが命綱とも言えますかね…んむ」


白い喉が嚥下する。青い血管は同じ生命体に見えるのに不思議だ。見つめていると紅い瞳と目が合う。今日も眼鏡をかけている。


「美味しいですか?」


「美味しいかと聞かれると、どうでしょう?はは、普通かな」


「普通かぁ。やっぱりレパートリーがあまり無いのかな、なんて。すいません、変な事を」


何を言っても許されるかわからないのに

また気を抜いてしまった


「いえいえ、本当そうですよ。人間が羨ましい」


「はは」


穏やかに返されて和む。コーヒーを口に入れながら道行く人々を眺めてから視線を戻すと、四宮がため息をついていた。哲学的な悩みだったりするのだろうか、と思わせる憂い顔だ。


大丈夫だろうか


「はぁ…弟がいるんですが。拾い物をしてきまして」


「拾い物を」


「はい。命ある物ですから、確かに捨て置くのは良くないと思ったんでしょうけど、困ったなぁと」


「生き物って事ですか?」


「一一はい。耳を」


「え」


照れるし

息がかかる…!


耳打ちを促され、思わぬ展開に耳が熱い。


心臓ばくばくしてきた


「…です」


う、聞いてなかった

おねだりみたいで恥ずかしいけど仕方ない


「す、すいません。もう一度。聞こえなくて」


「ヴァンパイアです」


息が…って

何だそれは


「えっっ!!」


「そう、なんです。どうしたらいいものか」


「えーっ…」


心臓が別の意味でも驚いてしまったのだった。




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