ひまわり

水島あおい

第1章 ひまわり

第1話

「薫ー!」

クラスメートの女子が走って来た。

桜井薫は立ち止まって、その子の方を振り

向く。

「これ、薫から茅館君に渡して」

見ればラブレターである。

薫はジッとその子を見た。

「渡すだけよ」

薫はラブレターを預かった。


「私、郵便ポストじゃないんだけど」

薫は横目で茅館一哉を見た。

一哉は黙って頷くと、手紙を鞄に閉まった。

薫と一哉は幼馴染である。

家もお向かいさんだ。

一哉は子供の頃からそれは可愛い子だった。

薫とは何もかもが違っていた。

「須藤明美って新体操部で可愛いよ」

「それが……?」

一哉は全く興味がない様子だ。

「いっちゃんってどんな子が好みなの?」

「お前以外」

一哉はサラッと言った。

「俺はお前の将来が心配でならないよ」

「何よ。それ。父親みたいな事言わないでよ」

薫はソッポを向いた。

「とにかく手紙は渡したから。ちゃんと返事書きなさいよ」

「分かってるよ」

「じゃあ、先に帰る!」

薫はドタドタと走り出した。

その後ろ姿を見て、一哉は呟いた。

「あれじゃ嫁の貰い手ないじゃんか…… 」

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