第8話

「どうしたの?悠乃。なんかタイミングズレてなかった?」

舞台袖に引っ込んだ瞬間に、聖奈が言った。

「そんな事ないよ」

「悠乃、お客さんだよ」

その時、スタッフが悠乃に声を掛けて来た。

廊下を歩いて行くと、長椅子があって

上野篤哉が座っていた。

「三島悠乃です」

悠乃は篤哉の前まで歩いて行った。

「面白かったよ。これ受け取って」

悠乃は色とりどりのアネモネの花束を受け取った。

悠乃は漫才をして、花束を貰うのは初めてだった。

「じゃあ、俺はこれで」

「有難う御座います……!」

悠乃は感激で涙ぐんでいた。

篤哉はそのまま、廊下を歩いて行ってしまっ

た。

花束の中に手紙がある。

悠乃は中を開いて見た。

その瞬間に、腕から花束が滑り落ちていた。


"三島悠乃様


いつの間にか君の事を好きになっていました。

俺と付き合って下さい。

返事は次のライブの時に下さい。

宜しくお願いします。


上野篤哉"


「嘘……!」

悠乃はその場に立ち尽くしていた。

「何やってるのよ。悠乃。せっかく貰った花束落としたりして」

聖奈が歩いて来た。

花束を拾うと悠乃に渡そうとした。

「何見てるの?」

聖奈は横から覗き込んだ。

「嘘!」

聖奈も瞬間的に声を上げる。

そして悠乃と聖奈はお互いに呆然と顔を見合った。

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