ONE TIME

水島あおい

第1章 恋は突然やって来る

第1話

今年が過ぎていく……

6畳一間のボロアパートで年越しそばならぬ年越し鍋だ。

具は白菜と豚のバラ肉のみ。

ポン酢で食べるようにしていた。

三島悠乃はグツグツ煮えている鍋の中に箸を突っ込んだ。

「もういいんじゃない?」

机の向かいに座っていた立石聖奈が言った。

「豚肉はよく火を通さないと」

そのまま1分待つ。

「もういいんじゃない?」

聖奈は同じ事を言った。

「アンタのそういうせっかちな所が笑いにつながらないの!」

「悠乃みたいにダラダラしてたらタイミング外すだけよ!」

今年もまたダメだった。

準決勝の日、私達ONE TIMEは他の49組の漫才師達と一緒に結果を待っていた。

ベスト漫才は若手漫才師達の登竜門である。

プロアマ問わずコンビ結成15年以内なら誰でも参加できる。

決勝に進出出来るのは9組+敗者復活戦から勝ち上がった1組の計10組である。ここで優勝した者には確実にスターへの栄光が与えられる。

10年前に始まったこの大会は回を増す事に、参加人数が増えていた。

決戦はクリスマスイブである。

その準決勝の組の中にONE TIMEの2人もいたのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る