第8話

遂に念願のレギュラーになった……!

真尋は胸の中から沸き立つ喜びに踊りたいぐらいだった。

長谷部想が抜けたため、インターハイに進出できるかどうか難しい所である。

真尋はシューティングガードである。

兄の優樹はポイントガードになっていた。

今年のインターハイで白河兄弟の名前を轟かせてやる!

真尋の目は燃えていた。


「良かったじゃん」

心は数学の問題を解いていた。

テーブルを挟んだ反対側で真尋が頭を捻っている。

「やった!って感じだよ」

「うん」

「心は……残念だったな」

心はレギュラーにはなれず、ベンチメンバーになっていた。

「うん。悔しい。萌も千賀もダメだったし」

真尋は再び問題集に目を移すも、さっぱり分からない。

「俺、やっぱ数学苦手だなー」

「まーま、心ちゃん、気分転換して苺でも食べて」

「母さん、今、勉強中」

「嘘言いなさい。よそ見してたじゃないの」

母親はそう言うと、ガラスの器とフォークをテーブルの上に置いた。

「ありがとう。おばさん。頂きます」

心は母親に笑顔を見せた。

「はい。召し上がれ」

母親は優しい微笑みを浮かべると、そのまま部屋から出て行った。

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