第16話

「えー⁈嘘でしょ!」

「何で姫があんなキモなんかにチョコ渡したりするんだよ」

「俺だって信じられないさ、でも見た奴がいるんだと」

翌朝、クラスメイト達、いや学校中がその話題で持ち切りだった。

「嘘だろう!姫ちゃん、どんな趣味してるんだよ」

「何処に目を付けてるの?」

開のクラスでも本人がいるのに噂する声は止まらない。

開は次々に聞こえて来る陰口に耐えられなくなった。

俺と関わるせいで、姫野まで悪く言われてしまう。

ゴメン、姫野……

「違うから」

開は重い口を開いた。

「そんな噂嘘っぱちだから。姫野とは何の関係もないから」

噂話をしていた生徒達の声が止まる。

「そんな事考えた事もないし」

そこへ奈緒が入って来た。

それを見た男子生徒が声を上げた。

「ほらねー!だから言ったんだよ。ただの噂だって」

「姫がキモなんかにチョコあげるわけないじゃん!」

「ねえ、奈緒。キモにチョコなんてあげてないよね」

「え?」

「俺は知らないから。姫野とは何の関係もないし」

開はそう言うと教室から出て行った。

奈緒は茫然とその場に立ち尽くしていた。


「そっか……迷惑だったんだね」

奈緒は次の授業をサボった。

屋上の片隅で一人で膝を立てて泣いた。


……それから7年の歳月が流れた。

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