第16話

「2番立原瀬名さん、あさひスケートクラブ」

響は満場の会場の中に真野と一緒に居た。

目深に黒いキャップを被って、伊達メガネを掛けていた。

リベルタンゴのメロディが流れ始めて

瀬名は軽快に滑り始めた。

軽やかにステップを踏みながら、まずはダブルアクセルを跳んだ。場内から拍手が上がる。

響も拍手した。

それからフライングシットスピン。

課題になっていたトリプルルッツも無事に決まった。

そしてトリプルフリップ、トリプルトウループのコンビネーションと演技は進んで行く。

最後はビールマンスピンを美しく決めて、ポーズを取った。

場内から大きな拍手が送られた。


瀬名はノーミスで演技を終えた瞬間に弾けるような笑顔を見せた。

それを見た響はドキドキが止まらない。

胸が熱くなっていた。

席を立ち上がると、リンクの近くまで行き、ナイロンに包まれた花束を投げた。

瀬名は腰を屈めて挨拶すると、観客席に手を振った。


キスアンドクライで瀬名は花束を持ってコーチの山室と共に点数が出るのを待っていた。

心臓がドキドキしながら、カメラに向かって小さく手を振った。

「立原さんの得点。66.50。現在の順位は第1位です」

拍手が送られて、瀬名は山室と一緒にバックステージへ戻って行った。

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