第37話
出雲駅伝の日が来た。
体育の日は快晴で絶好のレース日和である。
21大学の選手達が出雲大社の正面の鳥居前に集結していた。
そして高岡学院大学の小室が先頭集団を突き放し、トップに躍り出た。
明和大学の1区、原は6位で、2区の川崎に襷を繋いだ。
2区はスピード勝負と言われる5.8キロである。
川崎は現在5位である。
歩希は3区の中継所で2区の川崎が走って来るのを待っていた。
水分補給をしっかりしておく。
川崎が襷を取って走って来た。
歩希はアスファルトに敷かれた白いラインの向こうに立っていた。
「川崎先輩、ラストです!」
歩希は襷を受け取ると中継所目指して走り出した。
少し行った先で咲香が手を振った。
歩希は笑顔で手を上げるとそのまま走り抜けて行った。
風が強い。
向かい風がひっきりなしに吹き付ける。
スピードが上がらない。
歩希は何度も時計を見た。
3区は風との闘いである。
歩希はしっかりと上半身を固定し、前だけを見て走っていた。
そして歩希の前に同じく向かい風に苦しめられているランナーがいた。
歩希は横からその選手を抜いて行った。
そして4位で4区の4年生、坪田に襷を繋いだ。
その身体にバスタオルが掛けられた。
隣を見ると咲香がいる。
咲香は歩希に優しい笑顔を見せた。
歩希は息を切らせながらも白い歯を見せて笑った。
歩希は3区で区間賞を獲得した。
4区の坪田が2人抜かれ、5区の山本はそのまま6位でアンカーに襷を繋いだ。
6区の4年生キャプテン岡島は何と2人抜いた。
これで4位でゴールテープを切ったのである。
既に歩希達部員全員がゴール地点に集結していた。
「キャプテン、最高です!」
マネージャーを含んだ部員22名に囲まれて岡島は澄み切った青空のような笑顔を見せた。
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