第13話
「おはよう」
翌日の朝、靴箱の前で上履きに履き替えていた静香の肩を1人の女子生徒がポンと叩いた。
「お,おはよう…遠坂さん」
名前を思い出しながら返事をする。
「越智さん,まずいよ…うちの学校って部活入る事になってるじゃん。入らないと停学になるらしいよ」
「て、停学⁉︎」
静香は思わずびっくりして目を丸くしている。
「そう。ウチの学校、部活に力入れてるから強制連行されるよ」
遠坂七海は声を潜める。
「う,嘘だよね……」
静香は青ざめている。
次の瞬間、七海は声を上げて笑い出した。
明るく楽しそうな笑顔だ。
「冗談に決まってるじゃん。越智さんって面白いね」
面白い⁉︎
静香はびっくりの上に仰天まで上乗せした顔で七海を見ている。
そんな事初めて言われたんですけど⁉︎
静香が固まっていると遠坂七海は真面目な顔になって言った。
「合唱部入らない?」
「え?」
「一緒にやろ」
う,歌?
「ほら、静香って料理上手いじゃん」
料理と歌って関係ないんじゃ……
そんな事を思っていると静香はいきなり腕を引っ張られた。
そして連れて行かれたのは誰もまだいなかった音楽室だった。
「部長!連れて来ましたよ。待ちに待った新入部員を」
え⁉︎私はまだ何も言ってないけど。
ガラッと引き戸を引いて中を見るとそこは無人の空間だった。
「七海、何してるの?」
突然後ろから声がして、1人の女子生徒が立っていた。
ポニーテールをしていてかなり可愛い。
「環奈先輩。連れて来たんですよ。やっと1人新入部員を」
「本当に⁉︎」
環奈は大きな目を更に丸くして静香を見ている。
「やっと、潰れかけの我が合唱部にも部員が入ったのねー」
環奈は大きく胸を撫で下ろしている。
「ありがとう。部長の守里環奈です。大歓迎よ。よく来てくれたわ」
静香にはただただ驚きしかなかった。
唖然としているうちに時間が過ぎていた。
「あ,あの……私、歌った事ないんです……」
ようやくやっと声が出て環奈も遠坂七海も静香を見る。
「嘘。そんな人いないわ。小さい頃とか歌手のモノマネぐらいしたんじゃない?」
環奈はそう言ってあっさり返す。
「それはそうですけど……」
それの何処が合唱部?
「い、いけない!ホームルーム始まる!行こう。静香!」
環奈は声を上げると、七海と一緒に音楽室を飛び出して行った。
合唱部に静香が入った事で部員は6人になり、無事部活としての活動が出来るようになった。
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