第5話

「俺、陽乃が好きなんだ。俺と付き合って欲しい」

突然の告白だった。

桜花高校の屋上には2人の他に誰もいない。

俊介は真剣そのものの目で陽乃を見ている。

「嬉しい。私もずっと俊介の事好きだったの」

陽乃は喜びで涙ぐんでいる。

俊介は堪らなくなって陽乃を抱きしめた。

初夏の風が2人を優しく包み込む。

俊介は陽乃を離すとその唇に自分の唇を合わせた。


「凪には言っておかないとな」

練習帰りに俊介は凪を呼び止めた。

「実は陽乃と付き合う事になったんだ」

「えっ?」

見れば陽乃も嬉しそうに微笑んでいる。

「そうなんだ。俊介さんなら言う事ないよ」

凪はその時、胸にチクリと小さな痛みが走っ

た。

何だろう?

この時の凪にはまだそれが恋の始まりであると気付いていなかったのである。

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