34 卒業祝いの食事会
実家は実家で厄介だ。
「おまえが魔法を使えるなら、パーシーもアナベルもカイルはもっと使える。戻って来てちゃんと教えろ」と言って来るのだ。
アナベルは学院で、教室にやって来ると
「お姉さま、ずるい方法をとったことはわかっています。それを教えて下さい。
考えなしのお姉さまに出来るんですよ。わたしならもっとうまくやります」とか言うのだ。
まぁハリソン様が助けてくれて
「アナベル。基礎は魔法の時間に習っただろう。基礎が出来ない人の才能は開かない。
もっと練習しないと」と行って連れて行ってくれる。
実家はへんな婚約話を持って来ない点は助かっている。政略結婚とかは考えないようだ。
そして、早めに寮に入れてくれたブルース様に感謝だ。
わたしはそんな日々を送り、卒業式を迎えた。
「・・・あなたがた卒業生の前には可能性に満ちた未来が広がっています。自分を信じて足を踏み出して下さい。みなさんの旅立ちを祝福して卒業式を終わります」
「卒業生は退場して下さい」と司会が言った時、花吹雪が会場に舞った。
見ると四人が筒を上に向けている。そこから花びらがどんどん出て来るのだ。
会場は響めき拍手が沸き起こった。
その中をわたしたち卒業生は、家族や知人に手を振りながら会場を後にした。わたしも四人に向けて手を振った。卒業生は全員が四人に向けて手を振った。
外に出ると急いで寮に戻った。家族に捕まると面倒なことになる。部屋に戻ってサンデーとクーロと遊んだ。大きいカラスの姿は見えなかった。
時間をみて外出着に着替えた。髪を緩く纏めた。
途中で魔法士のカーティスに会ったので家に行くと言った。
「おぉ、卒業祝いだな。たくさん食べておいで」と見送られた。
そうだ、久しぶりだ。たくさん食べよう。
実家に着くと執事が出迎えた。
「よくお出で下さいました」と執事が出迎えた。
「お姉さま。どうしてさっさと帰ってしまったのですか?魔法士部隊の人を紹介して欲しかったのに、本当に考えなしですね」
「あなたに紹介?馬鹿なこと言わないで」
「おめでとう。リリー」と母がやって来た。
「ありがとうございます」
「リリー。今日の祝いにブラックレイク家も来るから」と父が得意そうに言ったので
「そうですか」と答えた。
「座って話しましょう」と母は言うと椅子に座って
「リリー」とわたしを招いた。
父が得意顔で
「リリー、いい話だ。アナベルはお前にロバートを譲ってくれるそうだ。アナベルの献身に感謝しないといけないよ」と話し始めた。
「譲るとは、どういう意味ですか?」
「そのままだ。もう一度お前とロバート殿が婚約出来ると言うことだ」
思い切り嫌そうな顔をして
「その話はお断りしていますが」と言った。
父は静かにこう言った。
「意地をはることはない。そりゃ、ロバート殿は一度、お前を裏切った」
わたしは笑ってうんうんと首を振りながら
「はい、両家も協力してましたね」と言った。
父は一瞬言葉に詰まったが
「それは・・・悪いことをした。アナベルが・・・いや、それはロバート殿が悪いのだ。
美しいアナベルに心惹かれたのだ。
わたしたちもつい可愛いアナベルの願いを叶えたくて、無理ないだろ?
アナベルの願いだぞ!だが、アナベルも成長して反省したんだ。姉の婚約者を奪ってはいけないと」
最後は俳優のように高らかに言った。
母は大きく頷くと
「そうなのよ。だからあなたに返すって」と言った。
わたしはそっけなく
「いりません」とだけ言った。
アナベルも口を出して来た。
「どうしてですの?お姉さまはロバート様にいただいたものを有り難がって大事に、大事にしてましたよ」
アナベルを無視して
「いりません」余計なことを言わずに繰り返した。
兄も言い出した。
「魔法士部隊に入れたから、いい気になっているんじゃないか?」
あやうく
『もちろん、いい気持ちです』と言いそうになってとどまった。
兄はわたしの沈黙に勝った!と思ったようで
「そうだ。たかが、魔法を上手いくらいで、あいつらでかい顔して」と言った。
『上級武官は自ずと自信に満ちてでかい態度になりますよ』と言いたいけど、我慢した。まだ早い。
その時が来たら、こちらから喧嘩を売るんだ。
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