30 引越し完了

執事が客が来たと呼びに来たのでついて行った。


「あぁ、お義父様、お義母様よくいらっしゃいました」とアナベルの燥いだ声が聞こえた。


「ライアン様の隣りにわたしが座るのがいいですね。ね!お母様」


「アナベルは部屋を出てなさい」とお父様の声がした。一応お父様がアナベルに注意したね。驚き!だけど、アナベルは気にしないね。だから、しばらく待ってもアナベルは出てこない。


それでわたしもなかに入った。


「いらっしゃいませ。ブラックレイク侯爵閣下。侯爵夫人。ご令息様方」と言った。


「リリー嬢、久しぶりだな。元気そうで」と侯爵が返事をしたので


「はい、ご令息のロバート様との婚約解消をしたおかげだと存じます」と丁寧に言った。


「なんてこと言うの」と母は言ったが、侯爵は聞かなかったことにするようで、笑顔をそのままで時間停止している。


「本当のこと過ぎますね」と助け舟を出してあげた。するとアナベルが


「本当にお姉様は考えなしなんだから」と言った。


「えぇわたしもそう思うわ。わたしは考えなしよ」と明るく答えた。めげないアナベルは


「そんなお姉さまでもいいって。良かったですね」


「嫌です。ブラックレイク家が嫌です」


「リリー嬢、そんなことを言わないで。魔法士として働いて貰ってかまわない。君が働けるように息子は支えるよ」と侯爵が言い出した時は、全員まとめて穴に落としてやりたくなった。


落としてから埋めて上で飛び跳ねてやりたい。


「許可はいりません。好きに働きます」


「そんなひどい」とブラックレイク侯爵夫人が怒って言うが、怖くもなんともない。


「悪かった、そんな気持ちにしてしまうなんてロバートがすまなかった」と侯爵が言うが


「もう、たくさん。わたしはあなたをいりません」とだけしんぼう強く言った。


「リリー」「リリー、あなた」と両親が

「お姉さまったら意地を張らないで」とアナベルが言った。


「どうして、アナベルが二人と結婚しないの?」


「お姉さま、それだとハリソン様が困ります」とアナベルが答えると、ライアン様の顔が歪み、ロバート様がポカンとなった。



そこにノックの音がしてすぐにドアが開いた。護衛の一人だった。護衛と言っても騎士団の先輩だ。


休みに後輩の引越しの手伝いに来た体だ。ブルース様が頼んでくれたのだ。


「準備が整いました」と一言。

「はい。すぐに」と返事をして立ち上がると


「それでは、今から王宮の宿舎に参ります。魔法士部隊長の勧めですので従います」と挨拶した。


待っていた護衛と一緒に歩き出すと


「なんとリリー嬢」とブラックレイク侯爵が立ち上がり


「リリー、なにを言ってるんだ」と父が言って立ち上がった。


そして部屋の全員がわたしについて来た。彼らがわたしに近づくのを護衛役の先輩が止めた。彼は私服で来ている。


そしてわたしは両親に頭を下げて別れの挨拶をすると馬車に乗り込んだ。


馬車の座席にはサンデーが座っていた。あっけない、あっさりした独立だった。



宿舎に着いた。クーロが迎えてくれた。怪我したカラスもいた。

殆ど治っているけど・・・このカラスは名前をつけていない。いまは怪我してないカラスになっているが、あのカラスだ。このカラスも木に止まっていた。


荷物の入った箱を寝室。リビング。予備の寝室に置いて貰った。


後は自分でのんびりと整理する。サンデーは家中を見て回ると庭で遊び始めた。



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