08 長距離は長かった
競技会の日は運動着で学院に行く。全員分の更衣室がないからだ。
わたしはいつもの乗馬服だが、エリザ様は大変華やかな魔法士らしいローブを着ていた。わたしとの入れ替わりだから、魔法競技だ。
これみよがしの大きなキラキラ光る杖を背中にしょっている。
わたしは、腰につけたポーチにペン軸を入れて、ベルトに短鞭を下げている。
時間になってわたしは、馬の所へ行って準備した。厩舎で騎乗するとそのまま出発地点まで乗って行く。
見ると引いて歩いている人が多かった。しまった目立ってしまった。早く出発地点に着いたおかげで前の列に並んだ。
観客席を見るとナタリーとパトラが見ていた。その隣りにいるおじさんはどちらのお父様だろうか?娘を見に来たなんて・・・愛されてるのね。喉がつまったが馬が首をぐいっと曲げてわたしの足を軽く噛んだ。
そうよね、余計なことは考えない。たてがみを撫でると前後の馬をざっと見渡した。
合図の音は予想より大きくてわたしが吃驚して鞍の上で跳ねてしまったが、馬は落ち着いている。
この競技は長距離だ。馬がつぶれないよう走る。無闇に急ぐものではない。
わたしは、目処をつけた相手が前にでた所でその馬について行った。
運良くいい馬。いい乗り手だったようで、一定の速度で走っている。
わたしが十周した所で、他の競技が始まり、学生は散って行った。
あのナタリーかパトラのお父様は残っていて、わたしの前の馬を見ている。
なるほど、いい馬なんですね。三十周した所で前の馬が休憩をとった。わたしも真似した。
最後の一周は、馬が行きたがったので、走らせた。わたしは四位だった。
三十頭、出場して十六頭残った。優勝タイムは新記録だった。
最後の一周を走っている時、応援してくれるパトラとナタリーとお父様を見た。
ゴールは出来たが、わたしはへろへろで、一人で下馬出来なくて、降りるのを手伝って貰った。
疲れたーー
夕食の席で
「あの馬どうなった?」とお兄様がわたしに言った。
「あぁ、長くなかったからな」とお父様も言った。
「まぁ潰れた馬はいらないからお前が処分しろ!考えなしでもそれくらいはできるだろう」とお兄様が言うと
「それでいい」とお父様が言った。
「考えなしは馬をどう処分するんですか?」とアナベルが言うとお母様が
「アナベルはそんなことを考えなくていいのよ」と答えわたしに向かって
「そんなことを言い出すなんてほんとに考えなしね」と言った。
なんでわたし?!なにも言ってないに、と思ったが話もしたくないほど疲れていたので、黙ってお肉を切った。
疲れを回復させるのに食事は大事。わたしはデザートのお代わりを貰った。
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