06 いらない馬ってなにそれ!
「良いのよ、乗馬は嫌いじゃないし、人気競技じゃないけど」と答えると
「「ただ、ぐるぐる走るだけだものね。馬が!」」と二人が言った。
そうだ、乗馬、それも長距離は人気がない。特に女子学生に。
だけど、男子学生はこれで勝利すれば騎士団への入団の道が開ける。
女子学生は最後まで走り切ることは、殆どない。途中で棄権するのだ。
エリザ様は、自分こそ男子を退けて優勝すると豪語していたが、ちょっと走ってみて無理だと思ったらしい。でも棄権は恥ずかしいことらしく、彼女基準では。
それでわたしに代わってくれと言いだしたのだ。
わたしだっていやだ。魔法に出たいのだ。治療魔法をカラスに打っていたおかげで、的に水の玉を当てるのは、得意だ。
だから、断っていたのに、彼女は申込書を書き換えたのだ。彼女の従兄弟が生徒会にいるから頼んだと思うが、彼女はそうは言わない。わたしが申し込んだことになっていた。出場種目の最終確認が来て、わかったが、もうどうしようもない。
その晩、わたしは夕食の席で
「お父様、乗馬の長距離に出ます。馬を貸して下さい」と言った。
「馬?はぁ、もういらない馬があったな?」とお父様は後ろに立つ執事に確認すると
「はい」と返事が返って来て
「それをこれに」とわたしを顎で指すと、家族との会話に戻った。
翌日、学院から戻ってわたしは制服のまま厩舎に行った。
お父様が言っていた馬は、足を痛めた馬だった。馬をちょっと治療すると痛みはとれたようだった。
わたしは部屋で、あの馬をどうやって治療していくか考えた。
そしてお茶会の日、ロバート様は手が痛そうだった。
「腕を?」と聞くと
「競技で剣術に出るから練習していたらな」とぶっきらぼうな返事だった。心配させまいと気を使っているみたいだったから、わたしも気を使わせないように、そっと治療した。
たいした症状じゃないから、魔力が散っても効き目があった。
馬車が門を出て行った。妹のアナベルが外出したのだ。最近、丈夫になって来たようで時々街歩きをしているのだ。
「それでは、また今度。ではないな。次回は競技会の準備をしたほうがいいだろう。乗馬に出るそうだな。茶会は休みだ」とロバート様は帰って行った。またまた気を使ってくれた。確かに来週は忙しい。
わたしは、すぐ部屋に戻って乗馬服に着替えると厩舎に行った。
馬は少しずつ治療したので、大分回復していた。もともと強い馬なのだ。それがお兄様のパーシーが狩りに行って乱暴に乗って故障させたのだ。
長く騎乗すると跛行しはじめるが。これ以上治療するとわたしから取り上げられそうなのでここまでだ。
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