02 環境が能力を芽生えさせた
成長するに連れて誰でも出来ることではないとわかったが、もう人の顔色を見て気を回すようになったわたしは自分の能力を隠した。
この能力だってわたしが大事にされていないから芽生えた能力なのだ。
わたしはじぶんでもよくわかっているが、不器用というかよく転ぶのだ。子供の頃はもっと転んだ。両家が園遊会で話したきっかけも転んだわたしをライアンが助けてくれたことだったりする。
わたしが転んで膝をすりむいても乳母も侍女はたいして手当をしてくれなかった。皆アナベルの所に行きたいのだ。
そこでおなざりに
「痛いの痛いの飛んでけーー」と言うと
「はい、大丈夫」とわたしを置いていくようになった。傷口に砂がくっついていても、血が止まってなくても行ってしまうのだ。
わたしは、悲しくて悔しくて痛くて
「痛いの飛んでけー。飛んでけー」と繰り返した。毎日繰り返した。
ほんとに毎日転んでいたのだ。そしてある日痛みがなくなり擦りむいた所が綺麗になった。ただ、転んで打って出来たあざは残っていた。だから、転んだ日はもちろん、転ばない日もあざに向かって
「痛いの飛んでけー」「飛んでけー」とやっていたらあざが消えた。
ほんとにふーーーと消えた。
「出来た。これで転び放題」と思ったわたしはお馬鹿さんだ。
熱はと言えば、わたしだって、たまには熱を出す。でもひとりでベッドに寝てなさい。寝てたら治るからと、”そっとして”おかれた。
そこで
「熱よ飛んでけー」とやっていたら、熱が下がった。
アナベルが熱を出せば、医者を呼んでお父様は仕事を休み、お母様もお茶会を欠席して、つききり、侍女も廊下をうろうろするのに・・・そっとされているわたし。
わたしの能力でアナベルの熱を下げることが出来る。だけどなにもしない・・・わたしは意地悪だから。
子供の頃、ちやほやされるアナベルを見るのが辛くて裏庭に行った時、怪我した子猫を見つけた。なんとその子猫をカラスがつついているのだ。
わたしは一度転ぶも、そこに駆けつけてカラスを追い払った。
子猫の状態は酷かった。片目がえぐられて体も血まみれだった。
「飛んでけー」「飛んでけー」「飛んでけー」と何度も繰り返した。
気がついたら、息切れするし目の前が白くなったが、霞む目で見た子猫は元気になっていた。
片目はカラスに食べられたのだろう。潰れたままだったが、傷はなくなっていた。
わたしはこの子を部屋に連れて行って飼うことにした。
夕食の席で、父に頼むと簡単に許しが出た。
よく聞いてなかったせいだと思う。だってわたしの方なんか見ないから、目線はわたし以外の家族に向いているのだから・・・
でも飼えるようになった子猫に、わたしは毎日「飛んでけー」とやった。
ひと月で目が出来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます