ゼノン、力を使う



戦いが終わった後、ゼノンとアレンは、襲撃者たちを捕縛し、村の広場に連れてきた。地面に膝をつく襲撃者たちの表情は恐怖に満ちており、彼らの武器はすでに奪われていた。ゼノンは戦いの興奮が冷めるにつれ、心にこみ上げる感情を感じていた。力を使うことができた喜びと、仲間と共に戦えたことへの感謝だ。


「これで村は守られた。安心していいよ、アレン。」


 ゼノンはアレンに微笑みかけた。彼も少し疲れた表情をしながらも、ホッとした様子を見せた。


「本当に良かった…でも、ゼノンがこんなに強いなんて思わなかったよ。」


 アレンの言葉は、ゼノンの心に響いた。彼は今まで自分の力を隠していたのは、他力本願で生きたかったからだ。しかし、仲間と共にいることで、その思いは少しずつ変わりつつあった。


「アレン、実は…僕も、力を使うことに対して躊躇いがあったんだ。」


 ゼノンは少し口ごもりながら、自分の気持ちを言葉にした。アレンの目が期待に満ちているのを感じ、思い切って続けた。


「他人に頼ることで生きるのが理想だと思っていた。でも、今回の戦いでわかった。仲間がいるからこそ、力を発揮できるし、助け合えるんだ。」


 アレンはしばらく黙ってゼノンの言葉を噛みしめていた。そして、彼の顔に真剣な表情が浮かんだ。


「でも、ゼノンが強いのに隠していたのは…もったいないよ!どうして今まで力を使わなかったの?」


 その問いは、ゼノンの心に重くのしかかった。彼は自分が本当に望んでいた生き方を思い出し、少しずつその答えを見つけようとしていた。


「正直、怖かったんだ。他の人に迷惑をかけたくないという気持ちが強かったから、力を使うことに躊躇していた。でも、今は…」


 ゼノンは自分の内なる声を聴きながら、言葉を続けた。


「今は、僕の力が必要だということがわかった。アレンや村の人たちを守るために、もっと自分をさらけ出してもいいんだと思う。」


 アレンは満足そうに頷き、彼の目には嬉しさが溢れていた。


「それなら、これからは一緒に力を合わせていこう!ゼノンが強いことは、みんなの力になるんだから。」


 その言葉に、ゼノンは心から感謝の気持ちが湧いてきた。彼はアレンの信頼を背負い、自分の力をしっかりと受け入れていく決意を固めた。


「ありがとう、アレン。これからは一緒に歩んでいこう。」


 二人は固い握手を交わし、信頼の絆を深めた。その瞬間、ゼノンの心には新たな希望が芽生えていた。彼はこれからの冒険に向けて、仲間たちと共に戦い、守り続けることを誓ったのだった。

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