困っている吸血鬼を助けたところクラスの清楚系美少女に懐かれ、お互い家に通うような関係になった件
柊なのは
1章
第1話 お願い
俺、
なぜ羨ましいという視線を向けられているのか、その理由は今日あった席替えで俺は清楚系美少女と呼ばれている
の隣の席になったからだ。
さらさらと綺麗な長い髪にすらりとしたスタイル。横から見ても美人だと思えるほど可愛らしい容姿であることから彼女は男女共に人気者で告白されることはよくあるらしい。
そんな彼女と隣の席になったが、俺は別に彼女のことは可愛いとは思うが、好きという好意はない。
高校に入学してから6ヶ月経ったが、彼女とは一度も話したこともないし、クラスメイトでも関わりはほぼなし。
隣をチラッと見ると朝比奈は、クラスメイトと楽しそうに話していて、会話が終わると周りにいた女子達は帰っていく。
「朝比奈さん、また明日ね」
「朝比奈ちゃん、この前オススメしたお菓子、明日持ってくるね。バイバイ」
「はい、また明日」
手を小さく振り、天使のような笑顔で微笑む朝比奈も帰るようで椅子から立ち上がった。
(さて、バイトの時間だし俺もそろそろ……)
椅子から立ち上がり、鞄を持とうとすると隣の朝比奈はふらついており、危ないと思った俺は慌てて腕を掴んだ。
「大丈夫か?」
「す、すみません、少し立ちくらみをしてしまいました。私は大丈夫です。支えてくださりありがとうございます」
ペコリとお辞儀をすると朝比奈は、急ぎの用事があるのか急いで教室を出ていく。
俺も彼女の後から教室を出て、校舎から出ると朝比奈の姿を見かけた。ここからは距離が遠くて見えないが、彼女は誰かについていっているようだ。
(どこに行くんだろう……)
後ろ姿を見ていると校舎裏へ歩いていくので俺は告白なのではないかと予想した。
噂は本当だったんだな。よく告白されているというのは。
彼女から目を離し、バイト先へ向かおうとしたが、男が怒鳴るような声が聞こえてきたので足を止める。
本当に告白なのかと思い始め、朝比奈のいる校舎裏へ俺は近づく。すると男と朝比奈の会話が聞こえてきた。
「何でだよ、彼氏いないなら俺と付き合ってくれよ。朝比奈さんは俺がどれだけ君のことを好きでいるかわかってないな」
そう言って朝比奈に告白したらしい男は大きなため息をつく。
「好きなのはわかりました。ですが、私はあなたと付き合えません」
「何でだよ。俺の家、金持ちだからさ付き合ったら好きなところに連れていってあげるよ。後、俺なら朝比奈さんが満足するようなことしてあげられる自信がある」
少しずつ男は朝比奈に近づいていく。俺から見て男の顔はとてもニヤニヤしていて、告白して断られても簡単に諦めるかと言いたげな表情をしていた。
そんな男が怖いと感じたのか朝比奈は、一歩後ろへ下がる。
てか、満足するようなことしてあげるって何するんだよ。深くは考えたくないが、この男が最低な奴ということだけはさっきの言葉でわかる。
ああいう奴は多分、可愛い子なら「可愛い」、「好き」という言葉を誰にでも言うのだろう。そしてもっと最低な奴なら二股をしていそうだ。
本来、告白を盗み聞きしたくはないが、あの男が朝比奈に何かしそうな気がし、俺はこの場から離れることができなかった。
「ごめんなさい。私には付き合えないとしか言えません」
「っ! 何でだよ、俺のどこに不満があるんだよ!」
さっきまではまだ抑えていた方だが、男の怒りは爆発した。付き合えないの一点張りでイライラしたのか男は大声を出す。
「不満という問題ではありません。私は、あなたのことが好きではないので付き合えないんです」
好きではないとキッパリ伝えると男は拳をぎゅっと握り、彼女に近づく。
(言葉じゃ無理だから暴力か……?)
男は手を伸ばし、彼女に触れようとする前に俺は間に入り、男の腕を掴んだ。
「っ、おまっ、誰だよ! 今、告白中なんだ、邪魔するなよ!」
「告白の最中だったのか、それは知らなかった。けど、おかしいな。彼女、怖がってるけど? 君が大きな声を出したり、付き合えないからって意味のわからない条件出したりするから」
「怖がってる? いやいや、どこがだよ。俺は好きになってもらうために朝比奈さんに自分のことを教えて────」
「ごめんなさい。あなたがどんな人なのかわかりましたが、付き合えません」
「なっ!」
何度も断られ、それでも付き合おうとしていたが、男は舌打ちした。
「ちっ、よく見たらお前、可愛くねぇーわ。守ってくれたそこのパッとしない陰キャとお似合いだぜwwww」
男はケラケラと笑いながらこの場を立ち去っていく。朝比奈はイラッとしたのか、あの男に何か言いたそうにしていたが、無駄だと感じたのか我慢していた。
「大丈夫?」
「えぇ、大丈夫です。助けてくださりありがとうございます」
笑顔でニコッと笑う天使スマイルはとても眩しく、どういたしましてと言おうとしたその時、また朝比奈はふらつき、俺の胸にもたれ掛かってきた。
咄嗟に手で彼女を受け止めたため倒れることはなかったが、心配だ。
「またすみません」
「本当に大丈夫? 一緒に帰る友達はいる? いるならその子と帰った方がいいよ。1人で帰ったら危ないと思う」
「……友達いません」
いつも常にクラスメイトと楽しそうに話していたのでてっきり友達がいると思っていたが、いないと言われて俺は謝った。
「……ご、ごめん。なら俺が家まで送るよ」
「それは悪いです」
「けど」
「……ただのクラスメイトなのに心配してくださるなんて笠原くんは優しいですね」
クラスメイトじゃなくても俺は困っていたから朝比奈を助けようと思った。困っている人を見て見ぬふりはできないから。
「では、笠原くん。1つだけお願いしてもいいですか?」
「お願い? 俺にできることならいいけど……」
家まで送ってほしいとかそういうことをお願いされると思っていた。だが、朝比奈は予想とは全く違うことを口にした。
「嫌なら断ってもらっても構いません。笠原くん、少しだけ吸わせてください」
「…………ん?」
(聞き間違いかな……?)
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