第48話 子供&一回戦

「えへへー」


 満足げに笑顔を振り撒きながら歩く神楽ちゃん。

 なぜ彼女がここまで上機嫌なのかと言うと──。


「神楽ちゃん、次は何買いたい?お姉ちゃんが買ってあげるよ」

「ホント!?ありがと!るみおねえちゃん!」


 そう言って瑠実に抱きつく神楽ちゃん。

 それと同時に多幸感で溢れているような顔で神楽ちゃんの頭を撫でる瑠実。

 うん。なんで?


「おい、瑠実。なんでお前はここに居るんだよ」

「え?」


 俺の質問に瑠実は何言ってんだコイツみたいな目で見てくる。そして神楽ちゃんにも。

 え?この場でおかしいのって俺なの?


「何でって、オープニングセレモニーが終わったんだから、自由にしてても別に問題ないでしょ」

「それで屋台を見に来たと。……いや、試合を見ろよ!」


 コイツ、絶対大会には全く興味ないわ。俺が出場するからオープニングセレモニーを引き受けただけで、俺の試合が終わった瞬間に「はい、帰ります」コースだよ!

 ところで……。


「ねえねえ、るみおねえちゃん。なんでつかさはあんなにきょどーふしんなの?」

「それはねえ、頭がおかしいからだよ」

「せめて俺に聞こえないように言ってくれません!?」


 何でコイツらはこんなに仲が良くなってんだよ!?


「るみおねえちゃん、次はアレ食べたい!」

「うん、いいよ!」


 あ、貢いでるからだな。瑠実がずっと神楽ちゃんに屋台の売り物を貢いでるからだ。

 まあ、神楽ちゃんは純粋だから仕方ないかもしれないけど!もうちょっと警戒心を持とうよ!将来、悪い人に騙されないか心配で仕方がない!

 俺が頭を抱えていると、神楽ちゃんはハッと何かに気づく。


「あ、でもたくさん食べたら太っちゃう……」

「えー?大丈夫だよ。神楽ちゃん可愛いし」

「でもでも、太ったらつかさに嫌われちゃう!」

「じゃあ、束咲に聞いてみれば?」

「あ、そっか!」


 神楽ちゃんは少し不安げな瞳で俺の目をまっすぐ見て──。


「つかさ。太った私、嫌い……?」

「大好きです!」


 こんな可愛い表情でこんなこと言われたら、誰だって「大好きです!」としか言えないだろ!将来、変な男を誑かさないか心配だよ。俺は。

 少し不安になっていると、会場内から大きな歓声がここまで聞こえてくる。


「一回戦が終わったのかな……」

「つかさ!観にいこ!」


♢♢♢♢♢♢


「着いたー!」

「はあはあ……。二人とも早くない!?」

「お前が普段、あまり運動しないからだろ。というか見ろ」


一回戦がちょうど終わり、結果が会場に設置されている巨大なモニターに映し出されている。相手は──。


『一回戦、勝者はイタリアです!』

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