第37話 この日を忘れない

 電気屋さんでポ⚪︎モンの新作を買った後、次に行こうとした場所こそ……。


「俺といえばここでしょ」


 俺はドヤ顔でゲーセンを指差す。それを見た瑠実は何故か「うわあ……」とあからさまに引いており、さらにはこちらに冷ややかな目線を向けた。


「『うわあ……』ってなんだよ!俺がゲーセンで何をしたっていうんだ!」

「いやだって、初めて会った時にゲーセン一箇所出禁になってたじゃん……」

「……よし。入ろうか」

「あっ!話逸らすなー!」


 と、そんなこんなでゲーセンに入ったのだが……。


「ハハハハっ!止まらん!UFOキャッチャーの景品を取る手が止まんねえぜ!」

「ねえやめて!これ以上やったらホントに出禁になるからやめてえ!」

「お客様!これ以上は!これ以上はどうか!」

「やめろって?……いいや、やるね!景品が無くなるまで、俺は取るのをやめない!」

「お客様ああああ!」

「……大丈夫?著作権に当たったりしない?」


 題名言ってないから大丈夫だと思うぞ。

 ──と、そんなこんなで数分後。


「──で、景品をホントに全部取って出禁と……。バカじゃない?」

「うっせえ!」


 俺は先ほどのゲーセンも出禁になってしまい、瑠実とトボトボしながら帰路についていた。

 うう……。これで都内のゲーセンは全部出禁だ……。これからどうやって東京で暮らせばいいんだ……。

 そもそも出禁にする必要ある?俺は売り上げに貢献してんのに……。


「……瑠実。ここの近くのゲーセンって、どこにある?」

「秋葉原の駅の目の前。けどどうせそこも出禁でしょ?」

「……はい、そっすね……」


 二件目レッツゴーも出来ないと。過去の俺はどんだけやらかせば気が済むのだろうか……。いや、今さっきやらかしたばかりだから反省もクソもねえけど。

 泣きそうな表情で歩いていると、前を見ていなかったせいで目の前の人とぶつかってしまった。


「きゃっ!」

「あ、すんません。大丈夫っすか?……って、菊瀬きくせ……?」

「あ、冴木くん!?」


 俺は安奈を立ち上がらせ、互いに驚きの声を上げる。

 一体なぜ安奈がここにいるんだ。

 俺は疑問が連続して脳内で溢れて情報がいつまでも完結しない!状態に陥っていた。

 ただそれ以上に……。


「……」

「……」


 瑠実と安奈が笑顔で睨み合っている。

 怖い。お二人とも怖いよ。ニコニコしてるけど、その表情から「コイツ、ぶっ殺してやろうか」とか思ってそうな感じが漂ってる。


「「コイツ、ぶっ殺してやろうか」」


 とうとう口にも出したよ!もう終わったよ!どっちかが死ぬまでやり取りが終わんないパターンだよ、これ!

 と、最初に切り込んだのは安奈だった。


「どうも。マスクのお姉さん。私冴木くんがいつもお世話になってます。菊瀬安奈です」


 ビキッ……!


「あら〜。これはご丁寧にどうも。こちらこそ私束咲がお世話になってます。若山瑠実です」


 ビキビキっ……!

 ん?二人ともなんかニュアンスが……。

 二人は自己紹介の後にこれでもかと言うほど固い握手を交わす。……なんかギチギチいってますけど……。


「で、私冴木くんと何してたんですか?」

「え〜?私はねー、私束咲といろんなところでデートしてたんだ〜」

「へ、へー。そうなんですか。それはさぞかし楽しかったでしょうねえ」


 ビキッ!ビキビキッ!


「ええ。それはもうとても楽しかったよ。ついさっき、束咲と一生記憶に残るようなことをしたし」

「え……」


 ああ……。さっきのゲーセン出禁コンプリートか……。そりゃ一生記憶に残るだろうな……。

 安奈はバッとこちらを見る。俺は「いやあ〜」と頬を赤らめながら目を逸らした。

 ゲーセン出禁になったなんて、恥ずかしくて言えない……。

 だが安奈は急に涙目になって走り出してしまった。


「冴木くんの、バカあああああ!」

「え!?俺はバカじゃない!」

「……そう言ってる時点でバカなんじゃない?」

「あれ。そうなの?」

「うん。言い方がバカ」


 どうやら俺はバカらしいです……。

 初めて知ったわ。


──────

昨日更新できなくてすみません!

部活の遠征に行ってて更新が出来なかったんです!許してください!

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