僕が好きなのはあなたです

水島あおい

第1章 あすか

第1話

「芸能界?」

野辺祐希は、その言葉を聞いた瞬間、目を丸くしていた。

向かいには彼女の碓氷愛奈がいる。

「ごめん祐希。私この間、菜実と東京へ卒業旅行したじゃない?その時に渋谷でスカウトされたの」

「で?芸能界に行くのか?愛奈」

「母さんに相談したら、芸能界は誰でも行ける世界じゃない。だからやってみたらって言われた」

「俺が訊きたいのは、愛奈はどうしたいのかって事だよ」

「ごめん、祐希。どこまでやれるか分からないけど、私やってみたい」

島根の小さな町にある中学校は、今日卒業式を迎えていた。碓氷愛奈と野辺祐希は既に誰もいない体育館の裏に来ていた。愛奈と祐希は中学2年の時からの恋人同士だ。愛奈の突然の言葉に祐希は戸惑いを隠せない。既に愛奈は祐希と同じ高校に入学が決まっている。これから愛奈との高校生活が始まると、胸を膨らませていた祐希にとって全く思いがけない言葉だった。

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