大魔王に対抗するには



国王の言葉が静かに響く大広間。石造りの壁には古びた紋章が刻まれており、王国の長い歴史と誇りが感じられた。この国の名は「エルミア王国」。大陸の西に位置し、かつては豊かな自然と平和な日々を誇っていた。しかし、今はそれが儚い夢のように思えるほどの危機に晒されている。


「ここまでの事情は理解できただろうか?」


エルミア王国の現王、レオンハルト三世が重々しく語りかける。彼は、まだ若き5人の勇者たちを前にしながら、国の置かれている現状を改めて口にする。


「数年前、大陸の北方に封じられていた『大魔王ガルド』が復活を遂げた。奴は人間界に現れ、周囲の国々を次々と滅ぼし、闇の軍勢を率いて我が国に迫っている…」


王の言葉に、勇者たちは緊張した表情を見せた。大魔王ガルド。その名は異世界から召喚された彼らにも聞き覚えがないが、その恐ろしさは王の重い口調から伝わってきた。


「我がエルミア王国は、今まで他国と手を取り合い、この大陸を守ってきた。しかし、どの国も次第に力を失い、ついに孤立してしまった。私たちの国には、勇敢な騎士や魔導士もいるが…今のままではとても奴には敵わない。だからこそ、神に祈り、異界の地から君たち勇者を召喚したのだ。」



王の瞳には、国を守るために自分の命を惜しまない覚悟が宿っていた。エルミア王国は今、滅びの淵に立っており、勇者たちが最後の希望だったのだ。


「しかし、君たちがこのまま大魔王に立ち向かっても、奴には到底及ばない。そこで、魔界へ赴き、その地で力を磨いてもらうことが必要だ。」


大魔王ガルドに立ち向かうには、彼ら5人の勇者がさらなる強さを得るしかない。そして、その唯一の道が、魔界での過酷な修行にあるということを、王は静かに伝えた。



「我がエルミア王国の命運は、君たちの双肩にかかっている。どうか、覚悟を持って臨んでほしい。」


その場にいる全員が息を呑む中、勇者たちはそれぞれに決意を新たにした。この大地を守るため、そして大魔王を倒すために、自分たちが呼ばれた理由がようやく理解できたのだ。

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