1シーズン 第十話 孤独な殺人者 −真相編−

「この映像を見てください。」

そう言って新田はレンタル屋の防犯カメラ映像を彼女に見せる。

「え~、僕の優秀な部下がよく目を凝らして見つけてくれました。その点では非常にラッキーでした。確かにあなたの言った通り、午後十時二十一分には受付で会計を行っています。これが店員さん、そしてこれがあなた。この部分よく見てください。」

そう言って防犯カメラに映る彼女の姿を指差した。

「ここではですね、あなたが受付で映画をレンタルしていたんですが、よく見ると手元に何か持ってます。映像を解析したところ、これがペットボトルに入ったコーヒーであることが分かりました。しかも半分ほど無くなっている。これは成田さんが飲んだ毒物入りのコーヒーとは違うものであり、恐らく半分ほど無くなってるのはあなたが飲んだからだと推測できます。ついさっきまでコーヒーを飲んでいた人間が家に帰った途端に眠くなるわけ無いんです。

レンタル屋に入店する前にコーヒーを飲んでいたので映画を観たというのも映画を観る前に寝ちゃったというのも嘘です。先生、そろそろ本当の事を教えていただけませんか?あの日、【どこにいたんですか?】」

その言葉を聞いて、彼女は押し黙ってしまった。

「まさか、学校…?」

途端に彼女の顔色が一気に変わった。

「学校?学校ですね?となるとあなたは成田先生の事件に大きく関わってきます。そう言えば鑑識の結果、成田先生は塩酸によって毒殺されたことが分かっています。そして、あの日だけちょうど塩酸が化学室の保管庫から無くなっていました。化学室の薬品が入った保管庫の鍵は一括で山本先生が管理しています。必ず薬品を取り出すときはこのリストに日付、名前、持ち出す薬品名を書かなくてはいけません。」

そう言って新田は渡辺実里から借りた薬品保管庫のリストを彼女に見せながら説明する。

「しかし、ここを見てください。成田先生が亡くなった一昨日の午後五時ごろはですね、三学年の井上先生が明日行う授業で使うため塩酸を取り出そうとしました。しかし、塩酸は保管庫には無かった。リストにも持ち出した形跡はない。つまり誰かが持ち去ったんです。では、誰が持ち出したか?」

彼女の額から汗が滲み出してきた。

「山本先生です。」

そこまで言うと彼女は割って入ってきた。

「ちょっと待って、まさかあなた私が塩酸で徹也を殺したとでも言いたいの?どうやって?

鍵は山本先生が持ってるのに私が塩酸を持ち出せるわけ無いじゃない。」

新田は落ち着いた態度で制止する。

「まぁ、落ち着いて最後まで聞いてください。はい、確かに一括で鍵を管理しているのは山本先生です。しかし、あなたは山本先生と以前交際してましたね?」

徐々に彼女から吹き出した汗の量が多くなっていく。

「あなたが山本先生を唆して塩酸を持ち出させたんです。これ以外に現実的な推理はありません。」


              第十一話へ続く

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