2-7 忍∞infinity
一糸纏わぬ姿ではない、だが、
――
「あわわわわ!?」
「スカイ、大丈夫か!?」
怪盗スカイゴールドの中の子は、思春期真っ盛りの15歳男子。
それがこうまで、いくら大事な部分はギリ隠してるとはいえ、マドランナ含む7人もの裸同然に囲まれれば、たわわにあわわになるのは当然だった。
「わー、顔真っ赤にしてる♡」
「もっと見ていいんですよ?」
「怪盗君ってば、もしかして
マドランナを取り巻く女性キャスト達は、己の体を艶めかしく揺らす。たじろぎ顔を赤くするスカイの前に、たまらずキューティが躍り出て、抗議。
「待てまて、その
ゲームでのコスは、ある程度自由が利くし、デザインも出来る。しかし、余りにも
「――ふふ」
微笑みと供に、瑞々しく弾む、零れそうな膨らみ。
満ちた月のような肉体を、ただ繋ぎ止めるだけの紐、零れそうに揺れる熱帯果実が如き胸、まろやかな尻は二つに分かれてはみ出してて、どう考えてもアウトオブアウト。
それが許される訳があるのなら、
「ブ、
「――その通りよ、怪盗さん」
そう言ってマドランナは、胸の谷間に手をいれて、そこから
「ブラックヤードの機能は、運営の監視から逃れる空間作りだけじゃなし、ここでは、少しだけ、ルールを書き換えられる」
「――まさか」
「ああ、挑まれたPVPを破棄するのは流石に無理よ? 勝利条件は変わらない」
マドランナは、一歩踏み出す。
それだけでばるんっと、肉が弾む。ふしだらな肉体を誇示しながらも、透き通るような声を奏でて、
「私達の勝利条件は、貴方を倒すか、制限時間30分まで耐える事」
「……我達の勝利条件は、お前を倒すか、ブラックヤードを奪う事」
――PVP中のログアウトは強制敗北
「だけど怪盗、後者の条件は無理よね」
こうしてしまえば、と言って、マドランナは再びそのキューブを、豊かな胸元に挟み込んだ。これみよがしに、揺らす。
「それとも――手を出してくれるの? ベッドの上で」
「――バカにするなよ!」
「スカイ!?」
己の中から沸き上がる熱を、誤魔化すように、怪盗は飛んだ。そしてマドランナの胸元に伸ばし、そして、
その手は胸を前にして、ビタッ! っと止まる。
マドランナは蠱惑的な笑みを浮かべ、そして、
強靭な尾をスカイの脇腹に叩き込み、
「――ぐはっ」
続けざま、開脚して、頬に回し蹴りを叩き込む!
「――
「ぐううぅ!?」
蹴りはどうにか二の腕で受け止める。しかし二連撃の威力は凄まじく、スカイはそのまま吹き飛ばされる――そしてそこには、淫肉を揺らすキャスト達が待ち構えていた。
「こ、この!?」
「あら、手を出してくれるの!」
「いいわよ、サービスサービスゥ!」
「うう!?」
自ら攻撃を食らいたいように体を誇示してくるキャスト、スカイは完全に調子が狂い、ただ、逃げ回るばかりになってしまう。
「ス、スカイ!」
「――ごめんなさいね忍者さん」
「なっ!?」
何時の間にか左隣に、佇んでいたマドランナ。
露わな右目をキューティに向ける。
「貴方まで招き入れるつもりはなくて、貴方好みの子は用意してないのよ」
「わ、私にそういう趣味は!」
「撫でたいくらいかわいい男の子とか、恥じらいがちな女装青年もうちにはいるのだけど」
「どうしてそれを!?」
そう言いながら、キューティは至近距離でクナイを投げた。しかしマドランナは腕を組んだまま、ガキィ! っと、鋭い牙でそれを噛み止めて、そして、
蒼い炎を吐けばとろかして、融解した鉄を、喉に流してみせた。
――バーチャルとはいえその仕草は
「――くっ」
武威的に、随分見えた。
「安心して、私、暴力は嫌いなの――例え貴方が
「お前、なぜそこまで」
「前も言ったでしょう?」
どこまでも下品に肉体を飾る彼女であるが、その面持ちは、
「客商売が長いと、そういう事が解るのよ」
どこまでも理知的――それでいて、エビデンスが
……まるっと見透かされた上で、それでも、スカイの危機を一度放置しておいてでも、キューティはマドランナに、早急に確かめねばならない事がある。
「何故、こんな事をする」
マドランナは、プレイヤーから、そして運営からも愛される存在だった。
――夜の店のロールプレイ
秩序と規約が前提のこの
「運営だって鬼ではない、
「――勘違いしないで欲しいのだけど、私は金の為に色欲を掲げてる訳じゃないわ」
「それなら、何故」
「色欲の為に、お金が欲しいの」
金は目的でなく手段と言い切る輩、
「私らしく、生きる為に」
――世の中で成功する類いの人間
キューティは歯軋りする、問答で彼女の心変わりはない。それでやっと怪盗は、顔を赤くする怪盗に声をかけた。
「スカイ! よみふぃ着ぐるみが、一つ残ってる!」
揺れる胸に迫られるスカイに呼びかけながら、忍術の発動を準備する。
「誰か一人ならその裸同然を隠せる! 一番お前の魂を揺らす者を叫べ!」
「え、ええ!?」
いきなり性癖の開示を求められ、慌てるスカイ。
「やらしいにかわいいが混じるだけで、お前の視界は中和されるはずだ! 早くしろ!」
「そ、そんな急に言われても!?」
「そこの犬耳か!? 青肌サキュバスもいるな! お尻の小さな女の子か!」
「う、ううう」
「言っただろ、私はお前を軽蔑も断罪もしない!
そこまで、言われて、怪盗スカイゴールド、いや、
白金ソラは、
リアルの性質と口調で、こう言った。
「銀髪の、現代風のくノ一です!」
……、
「私の事かぁ!?」
真っ赤な顔になったキューティ、慌てMAX。
「なななな何を言ってるのだスカイ!?」
「だってキューティがそんな事言うから、我の頭の中、お前でいっぱいで!」
「いや、それは嬉しいが!?」
「――妬けるわね」
キューティの隣に立ったマドランナ、翼を広げ、
――尾で地面を蹴って、滑空する
「なっ!」
ファントムステップと同じ程の勢いで、マドランナはスカイにタックルを仕掛け、そして、押し倒し、馬乗りになってみせた。
「スカイ!?」
慌て彼女は、マドランナに強制変化をかけようとする。しかし、他のキャスト達が笑いながら、文字通り肉の壁になって阻む。
「暴力は趣味じゃないの、だけど――こういう趣向は好みかも」
「や、やめろ、離せ!」
「貴方達の敗因はたった一つ」
マドランナは、儚げに笑い、
「自分を突き動かす大切な欲望を、罪にして目を背けてきた事」
膨らみ揺れる体を、重ねようとして、キューティは、
「スカイー!」
奪うどころか奪われようとする彼へ、叫んだ。
――その瞬間
「――えっ」
マントの留め具が――インペリアルトパーズが輝き出す。
そして、
「なっ」
キューティの目を通してだけ、よみふぃの拘束衣が、淡い光を放ち始める。
――考えるよりも早くキューティは
「――強制変化の術」
その技を、
「
放つ。
彼女の手に握られた
――増殖する
「えっ」
「わっ」
「きゃあ!?」
裸を包むよみふぃの着ぐるみ、包まれた彼女達は地に伏せて、
「な、なんなのよこれ!?」
「脱げない!?」
「――スカイからは、何も奪わせぬ」
グリッチの【特性共有】は、
すり抜けバグでなく、別の形となって、
――無限増殖バグ
「この手を
本当の意味でこの瞬間、
彼女は、怪盗の一味となる。
神様はまた、私達を愛してくれないと。
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