感想 その7

・外套に怯えて/鈴ノ木 鈴ノ子さん


 うわ、これはやられた、というのが感想でした。鈴ノ木さんの作品ということで写実的でリアルな現代ドラマかと思いきや、、、ということで読んでびっくりしました。

 当然オチに帰結するために物語は展開されていくのですが、うまく会話文で先を感じさせない作りになっていて、上手だなと思いました。こういった作品って起承転結の「承」が命なのですが、きちんと丁寧に会話と居酒屋での振る舞いを書いているので、読者は「飲み会のネタ話」だと思って読んでしまうわけです。正直、大変失礼ながら鈴ノ木さんがこういう”トリッキー”な話を書かれる方だとは思っていませんでしたので、良い意味で感動いたしました。

 最後の二人の得心した感じがまた魅力的で、うまく物語を終えたなと思いました。

 とても読み応えのある作品、ありがとうございました。


・敗戦、惜別の後に儚く/縦縞ヨリさん


 戦後の時代の人情というものを上手く描いている作品でした。特に中盤から終盤にかけて読者の感情を揺さぶるような表現が多く、またラストでは大作ドラマを観終わったかのような余韻を与えてくれました。

 ファンサでは技術的な話をいたしましたが、小説というのはあくまでも中身でありまして、このようなドラマを考えたところが素晴らしいわけです。わたしも考えてみたのですが、なかなか発想できるものではないな、と改めてそのすごさを感じている次第です。

 時代小説はカクヨムでは難しいのですが、これからもこういった本格的な作品を書いてみてほしいなと思いました。ありがとうございました。


・ナースアパート/あるまんさん


 ナースアパート、男性には神秘的という直言すればエロチックなイメージを与えてしまうようですが、確かに何かありそうな名称ではないかと思いますね。

 異性というのは川の向こうにいるくらいに隔てられた存在で、こんなにも科学や技術が進んだ今日であっても、本当に理解し合える存在になっていないというのは面白いといいますか、業が深いといいますか、複雑なものを感じます。

 たしかにわたしも男性にある種の「妄想」を抱くわけで、それによってなんらかの恋愛的あるいは生物的なアクションを起こしてきたと思います。そう考えてみると、ナースアパートに興奮するあるまんさんとわたしも変わらないんだなと思いました笑。

 面白いお話、ありがとうございました。


・最初のお嫁さん/縞間かおるさん


 御作、色を変えれば「悪役令嬢」などのカクヨムの今時点の流行ジャンルでもいけそうなストーリー展開になっていて、かつ上手に話が進んでいて大変感銘を受けました。ありそうでなさそうな話と展開、文章運びに思わず唸っていまいました。

 オチが命ですので、内容には触れられませんが、とにかくこれで本一冊は書けそうなきちんとした骨格がありました。シナリオライター的な才能を感じましたが、そういうお仕事や経験がおありなのでしょうか。

 ラストも凡庸でなはなく、ひとつ捻りを入れて終わっております。こうした構成力・演出力もキラッと光るものを感じで、わたしはウキウキしながら読んでおりました。内容というよりも作品に散りばめられている才能にうっとりできたのです。

 これからも期待しております。ありがとうございました。

 

・王の初恋/幸まるさん


 異世界ファンタジーを一万字でここまでのクオリティーに持っていったことに脱帽いたしました。ちゃんと一作を通じてストーリーがあり異世界という御伽噺を完遂させた手腕は本当に見事だと思います。少なくともわたしには書けないと思いましたので、「これはまいったぞ!」という感じです。

 上手く魔を差すようなキャラを入れて「困難」を演出することで、少ない文字数で異世界というドラマに説得力を与えていてすごいなと思いました。

 わたし自身が大変勉強になりました。ありがとうございました。

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