第2話 其の二
「牡丹灯籠など知らん」とおっしゃる方に、ものすごく簡潔にまとめたあらすじを記します。
黒川孝介、と言う若くして天涯孤独となった少年がおります。
母親は幼年期に生き別れております。
孝介の父親はお侍さんで、ある日、道端で別のお侍さんに斬られ、亡くなります。
この父親の仇を打つために、剣術「新陰流」を学ぶため、孝介は飯島平左衛門という方の弟子になります。
孝介と平左衛門は師匠と弟子の絆を深め、本当の親子のような関係になるのですが、実はこの飯島平左衛門が父の仇であることが発覚します・・・。
物語のあらすじだけ簡潔に述べると以上の通りです。
ここで、「怪談、牡丹灯籠」をご存じの方は、「知ってるのと違うな・・・」とお思いになるかもしれません。
その通りです。
この「牡丹灯籠」という話は、孝介が父親を斬られ、最終的に「飯島平左衛門の仇をとる」という、言わば父親を二度失ってからの仇討ちを成就するという話です。
その話において、「怪談、牡丹灯籠」の登場人物である「伴蔵(ともぞう)」「お露(つゆ)」「お米(よね)」は、出てくることは出てくるのですが、長い話のほんの1エピソードのみの出演となります。
本当の「牡丹灯籠」は実は怪談ですらなかったのです。
牡丹灯籠の原型は、(日本においては)芝居でもなく、歌舞伎といったものでもなく、実は落語です。
明治の人形町に存在した末廣亭という寄席にて、三遊亭圓朝という落語の天才が、25歳という若さにして完成させたのが牡丹灯籠です。
圓朝師匠(著名な噺家の名を出すときは『師匠』とつけるのが業界の常識らしいです。実際私の師匠だったわけではありません。)は、牡丹灯籠を語るにあたり、
「三日三晩(実際に1日に何時間語ったのか、何日語ったのかまでは存じません・・・)」語り続けたそうです。
当時の娯楽、というより、友達同士酒を飲み合う場所とでも言いましょうか・・・キャバクラもガールズバーもなかったこの時代、
「寄席」が交友の場だったという説がございます。
噺家の師匠が今の落語のように、10分程度で終わるものではなく、「また明晩!」と申しては後日続きを語る、などということが多かったそうでございます。
牡丹灯籠などはその典型でして、くどいようですが圓朝師匠が「また明晩!」を三日三晩、それ以上繰り返し、語り続けたそうなのです。
私が申し上げたいのは、一晩では語り尽くせないほど、スケールが大きい話だったことです。
牡丹灯籠が令和の日本でも知れ渡るに至った背景には、明治時代に二葉亭四迷、樋口一葉が起こした「言文一致運動」がございます。
「てふてふ」を「ちょうちょう」と書くようになったのがこの言文一致運動の一例です。
その技術は当時国会の議事録の速記に、主に用いられたそうです。
速記者の中でも酒井昇造、若林玵蔵(かんぞう)という方が、速記の技術を広めようと三遊亭圓朝の落語を二人で速記したことによって、現代文にてこの牡丹灯籠が残っております。
このお二方は、三日三晩、寄席に通い続けて物語を速記し続けたということになりますね・・・。
そんな涙ぐましい努力の末、「圓朝全集」が生まれました。この圓朝全集の一巻冒頭に牡丹灯籠が記されております。
タイトルを読むに「牡丹灯籠」はっきりと、そう、記されておりました。
「じゃあ『牡丹灯籠』として上演されてたんじゃねえの?」とお思いになるかと思いますが、私はにわかに信じられないのです。
だってあなた!ゲームオブスローンズのタイトルが、シリーズ通して「短剣ニードル」になったら納得いきますか!?
ごめんなさい!例えに失敗した感否めないです!!短剣ニードルは決して「モブキャラが持ってた小道具」ではありませんが!!
話し全部を通して考えたら・・・ねえ?わかっていただけませんかね?
「牡丹灯籠」をご存知ですか? @SBTmoya
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。「牡丹灯籠」をご存知ですか?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます