第16話

***




あっという間に迎えた放課後。


普段はあれだけ待ち遠しく感じるチャイムの音が、今日はなんだか虚しく聞こえる。



例のお昼休み以降、あたしの魂はどこかへ旅に出てしまったようだ。




『ちょっと璃子ちゃん、そーゆーことなら教えてよー』


『雪平くんとなんて羨ましい〜』


『で、結局付き合うの!?』


『もう返事はしたぁ?』



なんて、時間が出来ればクラスの女の子たちからの質問攻め。


困ったあたしは『なんでもないから』と逃げ続けるも、向けられた好奇の眼差しは増えるばかりで。




「はぁー……」



それもこれも、雪平くんが公衆の面前であんなことを言うから。




『俺、藍原さんこと好きになってもいい?』




ひゃーーーっ。


ダメダメダメ!


すぐさま、脳内で再生されたイメージをばしばしと手で追い払った。



……でも。


どうしていきなりあんなこと言ってきたんだろう。


あれってあたしのこと、好きってこと……なんだよね。



いつから?


どこが?


なんで?



ぜんっぜんわからない。


そんなふうに感じたことなかったし。普通に友達だと思ってたし。



……まあ正直?


なーんか妙に懐いてくれてるなーとは思ってたよ?


思ってたけどさあ。



まさかそういう意味なんて思わないじゃん……!

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