決戦・カクトス村
第25話 彷徨者ディディ
震動検知器に引っかかった、遠くから押し寄せる
震動検知器に引っかからなかった、村の中心にある市場へ突如出現した一匹の
どちらに対処するかは比べるべくもなく。
「ちっ、終わったら酒浴びさせてもらうでホンマ!」
ディディは〈
遠目から見ても市場の中心にいる
「ちっ、やんちゃなやっちゃな!」
ディディは、家よりはるかに大きな体躯をした凶悪なミュータントの元へ一直線に突っ込んでいき。
「突然来られると困るんやわ! 呼び鈴くらい鳴らしてもらわな、もてなしの準備できひんやろ!」
屋根上から大きくジャンプ。市場の中央で堂々と構える
「って、エサんなってたまるかいな」
ディディは唱える。
「
それは己の
唱えた直後、全身からエネルギーの奔流が噴き出す。ディディの小柄な体のつむじから尻尾の先まで、すべてに力がみなぎる。
ディディは空中で体を丸めると、縦方向に高速で回転を始める。さながら車輪のように。彼女は武器を用いない。しいて言うなら、その回転こそが彼女の武器であり──
「喰ってみぃや、デカミミズ!」
空中でディディが加速した。回転を伴った突進は、
ぎゅり、と
その音を皮切りにして、ディディは
高速回転する肉体。
巨大なミミズの背に、ぱっくりと切れ目がうまれていた。
「Brooooooooooooop!」
悶え苦しむ
痛みを訴える害虫を見上げる。
「先史文明にゃ、どんぐりが転がるっちゅー童謡があったらしいねんな。ウチの
ただし肉体を極限まで強化し、推進機構を備え、とりわけ大きくフサフサな尻尾を大ぶりな刃物のようにして敵を斬りつける
それが〈
至極シンプルな
「ウチを喰おうって? 百年早いわ、ひよっこ」
「Grrrrrrrr……!」
「なァ、ひよっこ」
ディディはビッと人差し指で
「あんたどっから湧いた?」
村の地下には家々の基礎がある。おまけにパイプの類いも巡っている。なにより、〈
格子状ゆえに隙間はある。しかし、
「ところがどっこい、アンタは来たっちゅーわけやな」
手段は不明。どのように村の中央部である市場へ辿りつけたのか。震動検知器もこの個体の出現には反応できていない。防護網を破ろうとしたのなら下から突き上げるような揺れが起きていたはずだが、そんなこともない。つまり侵入経路は不明。
だが、それゆえに分かることもある。
「なあ、誰かの手引きやろ?」
「Brrrrrrr……!」
「ん──?」
ディディはその襲撃者の頭上がキラリと光るのを見逃さなかった。朝日を反射して、なにがしかの光沢を放つ……おそらくは金属。硬質化した〈
考えがまとまる前に、
「ハッ、謎解きはバトルのあとでっちゅーこっちゃな!」
ディディは迫る
いまの彼女は風に舞う羽毛。掴もうとするのは至難の業だった。
「デカけりゃ勝てるっちゅーわけじゃないんよ、ボウズ」
ディディは、倒れ込んで地面を揺らした
リュートが〈
ディディの体格では質量が足りないが、それを補うのが
「輪切りと背開き、どっちがええか──まァ、選ばせんけど」
ディディは横たわる
「Goaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!」
神経をズタズタに傷めつけられた
荒波を乗りこなす船乗りのように、のたうち回る
「仕上げやな」
大きな尻尾を天に掲げる。朝日を受けて輝くそれは、さながら断頭台の刃のようで。
「ねんねの時間や、ボウズ」
ディディの体が急降下する。落下エネルギーに渾身の回転を加え、推進力を爆発させている。小さな体が生み出す殺傷力は
バヅン!!!!!!!!!! と、音がして。
振り下ろされた断罪の刃が、村へと侵入した不届き者の首を刎ね落とした。
「今度からは呼び鈴鳴らして玄関から来るんやな」
ディディは
砂の中を進むために特別硬く発達した
「なんやこれ」
しゃがみこみ、違和感に手を伸ばす。手のひらほどの大きさの装置が
「まさかこれ、〈
言葉の最後は遠くから鳴った金切り音にかき消された。
村よりも遠くから発せられている。ディディにはそれがすぐに判った。
「あかん! 小物に気ぃ取られすぎたわ!」
ディディは装置を放り捨てて
波のように押し寄せる
黄土色の壁が迫っている。
村へ到達するだけで、砂嵐が直撃するような被害がもたらされることは間違いない。
ディディは渇いた笑いをこぼす。
「ハハハ……団体さんにしたって多すぎるやんなあ」
気の抜けた声だった。ディディは確かに強い。だが、百を超える
「ま、それでも
不敵に笑う。それが
ディディは己の頬をぴしゃりと打ち、
と、その一角が爆ぜる。膨大な光量が破裂して、夜が明けたばかりの平地に朝日と
轟音とともに
「っ……!」
ディディにはその強烈な一撃に見覚えがある。
数日前に目にしたとき、いずれ最強の
「リュート! 間に合ったんか!」
◆ Tips ◆
〈
頬袋をポンプのように使って全身に〈
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