トンネル【検索】

少し酒を飲みすぎた。

そう言いつつも家路へと足をすたすたと進めている途中、後ろからこんな声が聞こえてきた。

私の目の前には鼠色が映えた

トンネルが続いている。

「すいません、アンケートです」

こんな夜に何事だ?

私は舌打ちを交えたまま後ろを振り向いた。

「アンケート?なんじゃそりゃ?

え?こんな時間に何をしている」

振り向くと、背筋が曲がった小汚い若者が

笑みを浮かべながら待ち構えていた。

その袖の伸びた白いロングTシャツ、

散り散りになった髪の毛は不潔極まりないものである。

「さあ、どうでしょうか、

とはいえアンケートはアンケートです」

「話を聞いているのか」

怒りを乗せるようにそう返した。

「私はい…」

それを遮るように私は強く言った。

「やめろ、いい加減にしないか」

しかしながら若者は

そのままの口ぶりでこう告げた。

「私が生きている人間に見えるでしょうか」

私は何を思ったのかそれに口を出してしまった。

「生きている人間に見える、

あ?、これで十分か?」

男はケタケタと抑えるように

震えながら笑い始める。

その拍子、彼の身体が前のめりに

なったことを瞬時に理解した。

こちらに向かってくる。

「正解」

笑いを止めることなく、こちらに駆け出した。

私はその右後ろ足を瞬時に向きを変え、

逃げる姿勢をとる。

笑い声が反響する。

「正解」と彼がそれを反芻する。

その響きが覆い被さるようにして

私の全身へと駆け巡る。

私は息を止めるようにして危機に浸る。

その奇声がいまだに両耳へと貫通する。

私が慌てふためいたせいか、

その声が止まったことに気がついた。

恐る恐る後ろを振り返る。

しかしながら彼はいない。

私は安堵の表情を浮かべため息をついた。


数日後、友人に何気なく

このことについて話をした。

するとこんな返答が返ってきた。

「お前良かったな、知らなかったのか。

それ逆の方答えてたらお前死んでたぞ、

周りから死んでるって言われてた殺人犯が気狂ってずっとついてくるんだって。

その時なんて言われた?その返事ってやつは」

私は躊躇なく、正解と言われたという。

「やべえ、お前それマジかよ。

それが合図なんだって、だからすぐそばにいるかもしれない」






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る