宮島織風 短編集

宮島織風

猫は見ている

 猫は見ています。

 猫と一緒にいる、お坊ちゃんの事を、お嬢ちゃんのことを。また、私に泣きついて。私になにができるでもない。また、誰彼と…わかったよ。好きになでるといい、猫はここにいるから。


 猫は空を知っている、でもお坊ちゃんやお嬢ちゃんの行っているガッコウやショクバの事は知らない。そこでなにが起こっているのかな。文字を追って、文字を垂らして。猫が敷いていた紙束の上に、猫はよく座る。

 すると、とたんに払い除けようとする。猫がいた場所なのに。坊ちゃんはそこまでする様になってしまったのか。猫なの知っている坊ちゃんは、どこに行ったの。


 お嬢ちゃんも、また文字を追っていた。

 猫にはなにもわからない、でも分かることはある。短冊を見て、ため息をつく。そんなもの、くしゃくしゃにすればいいのに。

 くしゃくしゃにしたら、猫は怒られた。何で。お嬢ちゃんにとって、こんなのが大事なんてしらないよ。急に泣き出した、お嬢ちゃんはお坊ちゃんの事で泣いていた。最近、ご飯が少ないからお米を食べてやった。

 怒らなかった。むしろ、何も言わなかった。お天道様が高くに登った、お嬢ちゃんが食べているご飯はお坊ちゃんが小さい頃食べてたのと同じだ。


 何で、何で?


 ちゃぶ台に落ちたそれを、お嬢ちゃんは一粒さえ残さなかった。そんな余裕がないと、貴方もいつか離れなきゃかもと。離れるって、どこに?猫の家はずっとここ。

 何でかわからない、でもお嬢ちゃんはずっと笑っていなかった。お坊ちゃんは、今日も垂らした文字の上で眠った。お嬢ちゃんは、今日も椅子の上。


 猫は、お坊ちゃんを追ってみることにした。チュウガク?って所で、また文字を追っていた。シュウショク?の紙を見て、ため息をしていた。


 何で、辛そうなの。


 猫は分からない、でも辛いのは知ってる。

 お坊ちゃんは何で逃げることはないの。辛いなら、逃げるといいのに。咳を込んでいた。お母さんが持っていたものと同じだけど、お母さんは今ずっと見てない。辛い人が行くところに行ったらしい。

 たまに、お母さんの所に行ってはお母さんが泣いてた。お坊ちゃんに、ごめんね、ごめんねと。

 お母さんをあやしてた。猫をなでるように。


 猫は分からない、何で文字を追っては苦しむの。寒いある日、お嬢ちゃんは教えてくれた。先生になるって。お坊ちゃんは頭が良くないから、お仕事してみんなにご飯をあげるって。

 その先生になって、お坊ちゃんは笑うのかな。お嬢ちゃんも、お母さんも。猫は笑顔が好きです。


 お坊ちゃんが、出稼ぎに行く。

 お嬢ちゃんは泣いて送った。お母さんも、なんとかお家に帰ってきた。猫は、お坊ちゃんが寂しくな様にそっちに行きたい。お坊ちゃんは、大きな箱に乗ってどこかに行った。


 それから、ご飯が多くなった。

 お坊ちゃんから魚が来た。飛びつき、食べた。はじめてのお魚。みんな、切り身をお米に乗っけて食べた。猫は、そこにお坊ちゃんがいないのはおかしいと思う。

 お坊ちゃんが帰ってくると、傷ついていた。身体に線が入ってた。でも、大丈夫つて笑っていた。でも、とても傷ついてるみたいだった。

 お坊ちゃんの、昔からの温もりに少し血の匂いが入る。何をしてきたのか、分からない。ショクバが、大変な事をするらしい。それでも、たまに帰ってきてくれた。たまの散歩でお坊ちゃんと、太陽の下で歩けている。お坊ちゃんはお巡りさんになったらしい。それで今、食べれてる。


 猫は見ています、貴方のことを。

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