デート・ア・ライブ

@KoushiTachibana

1.十香デッドエンド

序章 邂逅 -restart-


 ──息をむ。

 それは、あまりに非現実的な光景だった。

 消し取られたかのようにかいされた街並み。

 いんせきでも落ちてきたとしか思えない、きよだいなクレーター。

 空をう、いくつものひとかげ

 全てが夢かまぼろしとしか思えない、鹿げた景色。

 だけれどどうは、そんな異常な世界を、おぼろにしか見ていなかった。

 ──そんなものよりもはるかに異常なものが、士道の目の前にあったからだ。


 それは、少女だった。

 みような光のドレスをまとった少女が一人、立っていた。

「ぁ────」

 たんそくに、かすかな声が混じって消える。

 他のどんな要素も不純物に成り下がってしまうくらいに、その少女の存在はあつとうてきだった。

 金属のような、布のような、不思議な素材で構成されたドレスも確かに目を引いた。

 そこから広がった光のスカートも、気を失うほどにれいだった。

 しかし彼女自身の姿ようは、それすらもわきやくかすませる。

 かたこしからみつくようにけぶるは、長いやみいろかみ

 りんそうきゆうを見上げるは、何とも形容しがたい不思議な色を映すそうぼう

 女神にさえしつを覚えさせるであろうかおものげにゆがめ、静かにくちびるを結んでいるその様は。

 視線を、

 注意を、

 心をも、

 ──いつしゆんにして、うばい去った。

 それくらい、

 あまりにも、

 じんじようでなく、

 暴力的なまでに、美しい。


「──君、は……」

 ぼうぜんと。

 士道は、声を発していた。

 とくしんとしてのどと目をつぶされることすら、思考のうちに入れて。

 少女が、ゆっくりと視線を下ろしてくる。

「……名、か」

 ここのいい調べのごとこわが、空気をふるわせた。

 しかし。

「──そんなものは、ない」

 どこか悲しげに、少女は言った。

「────っ」

 そのとき。

 二人の目が交わり──いつ士道の物語は、始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る