【第一話~駄弁る生徒会~】
「世の中がつまらないんじゃないの。
会長がいつものように小さな
しかし今回は
俺自身が
世の中、なんだかんだ言って「初めて」ほど楽しいことはない。
初めての
初めての親友。
初めての
初めての成功。
初めての……エロゲ?
まあなんにせよ、いつだって思い返すとこう思う。
「昔は楽しかった」
小学生になった時、ランドセルを
中学に上がった時、バスの定期を
高校に受かった時、他者を
で、そういう意味でいうと……。
「じゃ、
「ぶっ!」
俺の
会長は
「今の私の言葉から、どうしてそんな返しが来るわけ?」
「
「なにを
「ありますよ、自覚。この生徒会は俺のハーレムだという自覚なら
「ごめん。副会長の自覚はいいから、まずはそっちの自覚を
会長が今日も
俺より
そう、萌え。そんな言葉が
「会長ぉ」
「なによ」
会長は茶を拭いたティッシュを丸め、生徒会室
そんな会長に、俺は机に
「好きです。付き合って下さい」
「にゃわ!」
見事にゴミ箱とは反対方向へ飛んでいくティッシュの
会長はまた俺を涙目で睨みつけていた。
「杉崎は、どうしてそぉ
「本気だからです」
「
「『ひ○らし』ネタは
それに涙目でぷるぷる
「杉崎、この生徒会に初めて顔出した時の、第一声を
「なんでしたっけ? ええと……『俺に
「
「あれ? それじゃあ……『ただの人間には
「
「
「なんの
会長も見ていたらしかった。……いや、この話題の
……そうだそうだ。俺、
「
「そうよ! あの時点で、この生徒会に
「失礼な。誰でも良くはありません。ス○ーカー文庫的に言えば、『美少女以外に興味ありません』」
「可愛いなら誰でもいいってことでしょうがっ! あと、やるならせめて
「
「
「
「そういう問題じゃない!
「ええー。ふらふらしている主人公より良くないですか? 最初からこう、バンと、『俺はハーレムルートを狙う!』と宣言している方が、
「残念ながら貴方はギャルゲのモテモテ主人公とはスペックが違うわ!」
「じゃあなんの主人公だと言うんですか! こんなに女の子が好きなのに!」
「
会長はとても
「顔はいいのにぃー」
「
それを言ったら美少女キャラたる会長こそ……と思うものの、まあいいだろう。
俺は
「…………」
会長が
「どうしました? 会長」
「……杉崎は、たまに気が
「ええ。そういうギャップって、好感度の
「狙い!? しまった!
「ふふふ……。ま、
「ふぅん……
「ええ、尋常じゃない
「あー、なんのための体力かは、言わないでね」
会長はロリな
しかし……。
「会長。その
「…………。……はぅ」
赤くなってしまった。もじもじしている。……可愛いなぁ。ホント可愛いなぁ、会長。俺が血のにじむ努力をして生徒会に入った理由だって、この会長が原動力になっている部分大きいもんなぁ。
そんなわけで引き続き会長をいじっていると、まことに残念なことに、二人の時間を
「キー君。あんまりアカちゃんイジめちゃだめよ」
そう言いながら、会長と同じ三年の、書記である女性、
ちなみにキー君とは俺のこと。俺の名前は「鍵」と書いて「けん」だから、キー君。
で、アカちゃんは会長のこと。これも、会長の名前が「くりむ」だから、クリムゾン=
ただ、
さてその知弦さん、会長とは正反対の人間だ。長身で、出るとこ出て
会長とは別の意味で、理想の美少女と言える人だった。いや、美少女というより、美人と言うべきかもしれない。
対面の席に彼女が
「いじめてなんかいませんよぉ。ただ、
「ある意味余計に悪質じゃない」
「
俺がそう説明すると、会長がまた「
会長がいじけている間に、知弦さんと話すことにする。
「しかし、今日はどうも集まり悪いですね、俺のハーレム」
「キー君のハーレムじゃなくて生徒会ね。いいんじゃないかしら? 別にこれといってイベントも
そう言いながらも、知弦さんは
「分かってないですねぇ、知弦さん。基本的に好感度は、
「当然の
「つまり、生徒会室に来ないことには俺との愛を
「だから来ないんじゃないかしら。むしろ」
さらりと
俺はコホンと
「でも、知弦さんは俺との愛を育みに来てくれたわけですね!」
「…………。……あ、うん、そうね」
「く……。しかしこういうクールキャラこそ、
「あ、それは
細目で口元に
会長の「ひ○らし」ネタよりよっぽど
仕方ない……。
「分かりました」
「え、この話聞いた上で
「知弦さんとは、体だけの関係を目指すことにします! 心はいりません!」
「…………。……さ、次の問題は、と」
そんなことを考えていると、ふと、会長が勝手に知弦さんのスナック菓子に手を
「太りますよ」
「うぐっ。……だ、大丈夫。栄養を、
「いいですけど。
「だ、大丈夫! 私ほら、太りにくいから!」
「胸と背も発達しにくいですがね」
「……ええい! はむ!」
あ、食べちゃった。
「……次の問題の回答は……よし、『メタボリックシンドローム』、と」
「…………」
知弦さんがノートに目をやったままで、酷いことを言っていた。……本当にそんな問題があったのだろうか。
会長は、スナック菓子一
俺はぷるぷるしている会長の
「大丈夫ですよ、会長。もし、もらい手がなくなったら……」
「え? もしかして……太った私でも、好きって言ってくれるの? 美少女じゃなくなっても? 杉崎……あなた……」
うるうると
「もらい手がなくなったら……仕事に、生きて下さい」
「リアルなアドバイス!?」
「俺、
「陰からなんだ! 私、
「まあ、ですから太らないように
「あうー」
会長が肩を落とす。
「頑張れ、俺のハーレムに
「あ、なんか急に太ってもいいような気がしてきた」
「…………」
どうして
知弦さんは
とてつもなく
「おっくれましたぁー」
「す、すいません」
対照的な
前を歩く元気少女、
特定の部活こそ入ってないものの、運動
ただ……それだけに、俺みたいな男は
そしてその
この子がまた、姉の深夏に全部元気を
その椎名
「そうそう、深夏と真冬ちゃんは、『初めての時はあんなに
最初の話題に
「なんだよ、やぶからぼうに」
俺の
「いやさ。会長が、世間がつまらなくなったんじゃなくて、自分がつまらなくなったんだ、なんて久々にいいこと言うものだからさ」
「久々とは失礼なっ!」
会長がまたなんか
俺の
「ま、真冬はお
「化粧?」
「はい。子供の
「ああ、なるほどね。真冬ちゃんらしいなぁ。
「あ、ありがとうございます……」
「こら
真冬ちゃんが俺の言葉に
「まあまあ。
「いやいや、嫉妬じゃねーから!」
「深夏にも、
「しかもあたしの魅力じゃねぇ!」
深夏は
「ヤキモチじゃねーって!」
「おお!
「
「思い込み? ……仕方ない。そういうことにしておいてあげるよ。照れ屋さん♪」
「こ、殺したい……」
俺の言葉に
さて、なんだかんだで生徒会メンバーは今日もきちんと集まった。
俺は自分を囲む美少女四人を見て、一人、
「ううん、ハーレム
俺の言葉に、知弦さんが「そういえば」と返してくる。
「キー君は《
「そうだよなー。コイツ、どう見てもただの色ボケ男だよなー」
深夏が同意し、真冬ちゃんは
俺が
「散々言ってきたことだけど、やっぱりこの学校の生徒会役員
会長が、
「俺はこのシステム、最高だと思いますけどね」
この学校の生徒会役員選抜はとても変わっている。
まず、
しかもこのシステム、実は
となると、その「憧れの生徒達」が上に立っていれば、案外
結果、生徒会は美少女の集まる場となるわけで。
しかし、やはり
だがそこに、年度末でトップをとって希望を出したのが……この俺、杉崎鍵だというわけだ。理由は
「しかし、鍵もよくやるよなぁ。そのパワーは
深夏が
「俺は、《自分以外全員美少女のコミュニティ》に入るためなら、なんだってしますよ。ええ。入学当初
「……な、なんか真冬、たまに杉崎
「真冬っ! それは
深夏が
「頭いいのは事実だぞ、深夏よ」
「動機が
「
「悪い見本を
深夏の言葉を受けて、会長も「そうだ!」と乗ってきてしまった。
「成績いいってだけで入れちゃうのは、やっぱり変だよ! そのせいで、杉崎みたいな
「生徒会の全員をメロメロにしちゃったのは悪いと思っていますが……」
「誰一人なってないわよ!」
「ええっ!」
「なにその
「まさか……そんな……。……まだ会長だけしかオチてなかったなんて……」
「私もオチてないわよ!」
「ええぇっ!」
「マスオさん的な驚き方、やめてくれる?」
「そんな……会長。じゃあ、あの夜のことはなかったことにするというんですか……」
「な、なによそれ」
会長が
「あの夜、会長、
「ここに
「
「むしろ私が弄ばれているんじゃないかしらっ!」
会長が
その様子を見かねたのか、知弦さんがノートをぱたんと
「キー君。私は別に
「う、ううむ……。知弦さんの意見も一理ありますけど……。しかし、どう取り
「
深夏が冷たい目で俺を見ていた。ああ、ツンだなぁ。皆してツンの時期だなぁ、まだ。
いいさ。俺の人生のバイブルたるギャルゲ……いや、実はエロゲ(
「ふふふ……これから次々と、生徒会メンバーは俺の
「魔の手とか自分で言い始めちゃいましたね……」
真冬ちゃんが
「ま、あんまりにデレないと、
「
深夏のツン度がメーターを
俺は彼女に「ちっちっち」と指を振る。
「
「なに?」
「ギャルゲに
「学園ドラマの最終回をえらく
「そうさな……まず
「どうでもいいが、あたしが知弦さんより
「真冬は……最初にオトされちゃうのですか……」
真冬ちゃんがなぜかぶるぶると
会長は、まだ
「どうして私が真冬ちゃんの次に攻略しやすいのよっ!
「え? だって会長……
「杉崎が他の美少女と歩いていたら、私は速やかに
「会長は
「……あー、杉崎を一番
会長がとても暗い目をしていた。なんかゾクリとしたので、
そろそろ誰も味方がいなくなってきたので、話題も変えちゃうことにした。
「でも、俺が一番
「? なに? どういうこと?」
「つまらない人間になる……つまり、
「あー。まあ、分からないじゃないかな、それは」
会長は
「そういうのは、気をつけてどうにかなることじゃないからね。生活ランクと同じよ。一度
「また、えらく美少女ロリ学生らしくない例出してきましたね」
「うちがそうだったのよ。
「なるほど。それで会長は、美少年を金ではべらす
「杉崎と一緒にしないでよっ! なにその趣味! 私悪女じゃない!」
「それに、男の
「どんだけ私
「
「もうただの根暗女じゃない私! お金とかそういう問題じゃないじゃない!」
会長がまた全力で
しかし、
すぐそこにある幸せが、目に入らなくなる。上に行っても上に行っても、まだ上に行きたくなる。でもいつか
でも……。
「ま、真冬は、そうなりたくないですけど……でも、どうやったら、そうならずにいられるのか、よく分かりませんね」
真冬ちゃんが
「えー、つまんねーな、なんかそれ」
深夏がむくれている。……確かにつまんない。どうせなら……まだ
知弦さんが続ける。
「ま、一部の人間……勝ち組と呼ばれるような人は、どんどん上に行き続けるけどね。
「そこそこ幸せに……ねぇ」
俺も、結局は
大して大手でもない会社に行って。
中の上くらいの給料もらって。
手ごたえのない仕事して。
どんなに仕事しても世界は変えられなくて。
自分が消えても代理がたくさんいて。
でもそんな
………………。
「
「え?」
俺の
「俺は美少女ハーレムを作る!」
高らかに
深夏が、「や、
「妥協するにしても、俺は高い所で妥協してやる! 美少女をはべらせて、いつか、『あー、美少女にも
「……なるほどね。とりあえず行くとこまで行ってみようってことね。いいんじゃないかしら。好きよ、そういうの」
知弦さんがなぜか
深夏もまた、「まあハーレムはさておき、そのスタンスは悪くないな」と笑っている。真冬ちゃんは「そうですよね……今から
で、会長はと言えば……。
「えー、あんまり頑張るのは疲れるよぅ」
悟りの境地でも、上を目指すのでもなく、
生徒会長という
ぽりぽりとスナック
…………ま、いいか。
幸せならそれでいいんだ、うん。
会長はお菓子を食べ終わる(知弦さんのなのに……)と、けぷっと
「というわけで、今日は
『…………』
全員が、彼女をとことん駄目人間だと思った。
ま、俺達も結局解散しちゃうんだけどね、それで。
……俺も、そろそろ仕事を始めないといけないし。
*
「……で、杉崎はまた生徒会室に残ってるんだ」
くりむは校門前で
深夏が
「まったく、だから
「ま、真冬は、杉崎
真冬の言葉に全員が
「この学校で、あいつのことホントに
「あれ、アカちゃん。やっぱりキー君のこと実は
「な、なに言ってるのよ知弦! そんなわけないでしょ!」
くりむの
ハーレムだなんだと強調することで、彼はどこかで特定の
知弦が生徒会室の方を見上げて呟く。
「ハーレムとか言うだけあって。彼は……私達の、大黒柱なのかもね」
「大黒柱?」
「そう。
知弦のその言葉に、くりむ、深夏、真冬の
知弦が続ける。
「でも、生徒会で駄弁っている間は、とても救われている。楽しいだけでいられる。
そしてそれを作っているのは、
知弦の言葉を受けて、くりむも生徒会室に
「まったく。自分で言っていたけど、あれじゃあまるで学園ドラマものの先生役よね」
「違うのは、問題を解決しようと
「ま、真冬はでも
真冬の言葉に、全員で苦笑する。それは、全員そうだから。なんだかんだ言って、どんなに用事があってもほぼ毎日生徒会室に顔を出してしまうのは、やはり杉崎鍵がいて、そこに楽しい空間が形成されるからだった。
くりむは「さて」と仕切る。
「さっさと帰るとしましょう!」
「で、でも、本当にいいのでしょうか。真冬は──」
「いいのよ。というか、杉崎はそうしてもらうことを望んでいると思うの。だったら、彼の
「…………」
「まあ、その代わり、杉崎が何か困っていたら、その時は全力で彼の力になるけどね」
「会長さん……」
真冬は感動したように目を
「でも、付き合ってはあげないんですね、会長さん」
「それとこれとは話が別。
くりむはそれを区切りに、「じゃあ、また明日ねっ」と
「つまらない人間も、悪くないのかもね……」
私立
そこでは毎日つまらない人間達が楽しい会話を
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