第56話 炎と啖呵
崩れかける
「若様!ここは任されよ!」
「ジカイ殿!明丸殿を連れて、早う落ちなされ!」
陽弧は喜々として旦那様としのぎ合いながら、ジカイにを
炎の舞台。
邪魔をしてはいけない。命をかけた
さらに燃え盛る城。二人の影はその中で切り結ぶ。
怒りも、哀しみも、後悔も・・・そして喜びも。
二人の影だけが知っている。刃の上に繋がった
会いたかった。会いたかったのよ。
どれほどの月日が女を暗く寂しい心の
しかし、解放された。
一番見て欲しい姿で、一番自信のある時で、耐えに耐えてきた心を。
苦労をかけたでもない。ようやったでも足りぬ。
言の葉だけでは、
その命を私の前に持ってこい。
ぶつけて、ぶつけて、ぶつけて、ぶつけるのだ。ただ受けよ!受け続けよ。
そしてあなたも泣いてほしい。
私の心は泣いていたのだから、ずっと。
愛しい
「こりゃぁ、落ちるしかあるまいなぁ。これ以上は見てられぬわ。
ジカイは
シロウはうずくまっている。
だいぶんと血を流し、疲れが極限まできている。
「命に大事はないが、さてちと困ったの。」
意識もはっきりしないようだ。歩けないだろう。
「まぁ、よくここまでもたせたのぉ。立派よ。しかし・・・」
落とさねばならぬ。
「おお、お前さんがおったのぉ。」
モモはその桃色の瞳でジカイを見つめる。
「この子らを連れていってくれんかね?」
理解したのか、ゆっくりと腹を地面につける。
「おおぉ、ええ子じゃ。」
ジカイは縄でシロウをモモに
第3の目は消えていた。
そして残ったふたつの目も閉じて、寝てしまっていた。
力を使って眠くなったのだろう。
「ええと、これとこれを・・」
ジカイは親が子どもの旅の荷を作るようにいろいろなものをモモの背中に入れていく。最後に
「これ、何だっけ?まぁいいや。」
急いでいたので、あまり考えずそれも突っ込んだ。
「良し!これで。いくぞモモ・・・」
その時だった。白い影がモモの背中に飛び乗った。
「ああっ」
ジカイは唸った。
猿のアダケモノだ。
その腕には、明丸を抱いている。
「こおりゃっ!」
ジカイは
そして、飛ばれでもしたらその老いた身では追いつけない。
しかし
「飛びやがった!」
ジカイは後悔した。連れていかれる。
その時、モモの目が桃色に燃えた。
あの
内側から、結界にブチ当たる猿モドキ。
その勢いはすさまじく、手にした明丸を放りだした。
ああ、落ちるっ。ジカイは手を伸ばすが届かない。得も言われない恐怖が奔る。
しかし、その時走り出た者がいた。
すんでのところで明丸を抱きとめる。
そして、猿モドキに向かって
「あんた!何しよっと!ケガしたらどうするとね!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます