第32話 銃と門
今、何て言ったのだ?
ユウジは
だがその時、
「なぁにをしておるのじゃぁ?出てこんなら門を閉めるぞぉ。」
ユウジは今の話は後回しにすることにした。
ーヴィィィィンー
首の後ろで魔法陣の回転する音がする。
「ユウジ様、搭乗許可を。」
頭の後ろの方ででメルの声がした。
「へっ?」
また、この人達はとり
ユウジは悩む。
こんなことを繰り返すと違う世界の扉が開く気がするのだ。
しかし、とり
不本意だ。本当に不本意だと土を
しかし
「ああ、もうっ!許可するっ!」
なるようになるだろうと腹をくくった。
「了解!」
後ろで声が
「ん?」
違和感がある。
「
ユウジは気がつくと吠えていた。
しかし、首筋の魔法陣搭乗口は無情にもその扉を閉めた。
「じゃあ、ワシの担当は
あああ、しっかり入ってしまっている。
頭の中で、男の声がする。それは悪夢以外のなにものでもない。
「おおーい、し、め、る、ぞぉぉぉぉ」
璃多姫をこれ以上怒らすのはヤバいというやつだ。
吐き気でクラクラしながらユウジはなんとか立ち上がろうとする。
ここから去っても、後ろから撃たれるだけだろう。
「メル、門までの距離は?」
「およそ、150mというところです。」
150mか、普段我らが使う火縄銃の有効射程の三倍だ。
鉄砲撃ちがなんとか当てる3倍の距離であの精度の射撃を璃多姫はしているとなると、相当に腕前と得物が良いのであろう。
今まで撃ってきた中では、連発と言える撃ち方はないようだった。
しかし、命中精度から判断して、並みの銃ではあるまい。
銃が何挺あるか分からないし、種類や弾種も変わるかもしれない。
父親の方は簡潔な戦い方をする傾向だが、娘は器用に立ち回る可能性がある。
ともかく、最大限の警戒をするべきだ。
だって、
では、被害を抑えるには最短距離で移動するのが一番かなとユウジは思う。
「まいったなぁ、みんな、魔法陣で移動する。ローラ!都合4枚必要でいいか?」
「いいよぉ!
なんか、
「ダメだ!」
いきなり
「いや!あんたがダメだ!」
目の端に現れた
あの
それはともかく
「メル、
「これは約束事ではないのか?ローラの嬢ちゃんが言っておったが。」
ローラ、言っても良いことと悪いことがあるのを教えなければ・・・。
ープツッー
「
メルにユウジは感謝する。
「それで、なんでダメなんですか?」
ユウジは、改めて
「走ってる姿を見せないとズルだと言われる。絶対!」
・・・なにそれ?
「なんで?」
「経験上!」
「経験って何?」
「娘の言いそうなこと。」
この
「これをしたら、こう言われる。
アレをしたら、きっと叱られる。
ワシ、ワカッテル。」
つまり・・・
「
「うん。」
とても素直な声が返ってきた。
・・・こういうことには慣れてんだ。
ユウジの目はほぼ座った。
「後ですな。」
「まだ、何か?」
ユウジは結構、頭に血が上り始めていた。
「戦闘の過程が大事でござる。負けず嫌いじゃし。」
「はあっ?」
どういうことだろう。
「あっさり終わるとつまらないと言うのでござる。」
「はあっ?」
さらにどういうことだろう。
「ギリギリで生を感じたいのでござろう。」
「うーん。」
ユウジ達は唸ることしかできない。
・・・空間転移であっさり終わらせてしまうと怒る理由はこれか。
戦闘狂で、負けず嫌い。生き死に勝負とその過程の充実を楽しむ。何と迷惑な。
「やっぱり、親子だね。」
「うん。」
「妻が病で死んでから、ワシはこのようにしか、娘と遊んでやれなんだ。」
あああ、そうなんだねぇ。ユウジには前の戦いを思い出してちょっとだけ想像できた。
きっと、不器用な父娘はこれが
「ワシとあの
土埃がたち、パラパラと砂が舞い散る。
目の前に一発打ち込まれた。会話は打ち切られた。
「もぉう、まぁてぇぬうわぁぁぁ」
怒れる璃多姫が配下の骸骨達に門を閉めさせ始めた。
「いかん!走れ!」
きっと狙われてるからと魂座に兜を出してもらってポイと投げた。
兜は撃たれた。それが空中で弾ける間に這うようにして下から次の遮蔽物に向かって走る。
頼む!連発はしないよな?今までのように。
しかし、
飛び出したと同時に頭を撃たれる!
すぐ撃ってきた!連発が可能なのだ!
すぐに、魔法陣を前面に展開して事なきを得たが、それがなければ即死。
仕方なくそのまま前面に等身代の魔法陣を張り、弾丸を吸収しながら確実に進むことにする。
「なんだぁ、その盾はぁぁ 卑怯だぞおおお。」
人の話も聞かず一方的に鉄砲撃ってくる人に言われてもなと思う。
一瞬、城門の周りの石や砂が赤く光った。璃多姫の心を映した色だ。
しかし、すぐ緑色になる。こんなにすぐ落ち着くものだろうか?
同時に衝撃音が奔る。
魔法陣の一番フチに当たった。
「ちぃちぃうぅえええ!どこに隠れてぇおられるのぉかぁぁ」
また、城門周辺が赤くなる。そして一瞬で消えて
空をつんざく音の前に、魔法陣の一番フチに衝撃を受ける。
「でぇてぇこぉぬのかぁああ。ならばぁ!」
怒りの音が何発も連なった。
「ユウジ様、危険です。」
メルが顔を出した。
「え?」
「彼女、高速回転する魔法陣の同じ個所に正確に着弾させてます。」
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