第17話 風車と魔法陣
これは、滝の上から落ちる前に自分が斬りとおした
ユウジの直感はそう言っていた。
パっと見ただけで分かる。
「これ、まだ生きておるのか?」
目を
「生きている・・というのは違うかもしれない。」
隣に立つマチルダの瞳は確かに紅く揺れる。
「どういうことだ?」
「さっきも言ったでしょ。現象の
一種の力の流れの集まったもの・・・そうマチルダは言っていた。
「よく分からん。しかしこれが国を
この花は、よく見ると紅い樹肉の部分に白い皮のように石がまとわりついているのだ。
だから、要所要所で曲がって伸びていくことができし、節がある。
それは洞窟の奥へと続いている。今は紫の光がまとわりついているように見える。
「どうなさいますか?」
シンとした洞窟の中、突然のメルの甘い声は香るようだ。
「メル殿、マチルダ殿、サヤ殿が心配なら早く帰っていただきたい。」
ユウジはゆっくりと考えていたことを口にした。
「・・・と言われますと?」
メルの甘い視線がひたとユウジの目に定まる。
「これでもオレは、この国を守る武人の
「奥に進まれるおつもりですか?」
メルの藤色の髪が右に
「そのつもりだ。」
「何か得られるとは限らないわ。帰れないかもしれない。」
洞窟の壁に映った、大きな岩に足組して座るマチルダの影はハッキリものを言う。
「確かにオレはあなた方の話でさえ、
いきなりユウジの目の前に光の星が
「ひどおーい。」
ローラが突然飛び回って、目がチカチカする。
「ローラ、すまない。そなたには感謝している。しかし本当に混乱しているのだ。」
「謝ることではありませんわ。」
「人ならば当然だな。」
ひと息吸ってユウジは話し出す。
「俺がひとつ言えるのは、俺は人が入れないク海の中で行動ができるようになったらしい。ならば、しなければならないことは、できうる限り、この目で見て回ることだ。」
「帰るつもりはあるのかな?」
「もちろんだ。たとえ何が何だか分からずとも、全てを若様に伝えねばならない。」
「苦労が無駄に終わってもかい?」
「無論だ。自分達の居場所を守るためには、俺はこれと思ったことはやりたい。その結果に後悔などしない。もし途中で果てたとしても、その行動をとれたことに誇りと喜びがあると信じる。果てるつもりはないがな。」
「まだ見ぬアダケモノもいるのよ。」
マチルダの口調は固い。
「それが一番問題だな。」
ローラがクルクル回りながらユウジの目の前で踊る。
「私もひとつ言えることがあるよー。」
「ん?」
今度は金色の
「最初から
「心強いな。感謝する。そなたがいればアダケモノには遅れを取らぬわ。」
その様子を見て、マチルダはアハハと笑い、覚悟を決めたように立ち上がった。。
「サヤからは、
フフフと甘い
「もとから
メル達はもう歩き始めていた。
「ありがとう。」
ユウジはその背中に向けて呟いた。
「つまりは、この根をたどっていけば親の花にたどり着くかもということだな」
天井の根を目で追う。蛇行してどこまで続いているか分からない。
「
ユウジはつと立ち止まって、前を歩く二人に声をかけた。
「そうですか。態勢を整えないといけないのですね。」
メルは察しがついたようだ。
「ああ、食料がいる。
「洞窟の外の方が調達できるわ。」
マチルダの言葉にユウジはうなづくと、
「まず洞窟の外を調べて、できれば
「
「だがマチルダ殿、若様の話であればあの石の花が咲くのは一月に一度だという。」
「余裕はあると言いたいのね。」
暗に時間はないと言いたいようだ。
「もちろん急ぐさ。調査だけでなく対策も講じなければならないしな。簡単なものでいい。奥が行き止まりならすぐ引き返す。」
マチルダは何も言い返さない。
「私の器のお水でお腹は満たされますわ。冗談ですけど」
場を和ませてくれようとのメルの
「灯りなら、私が照らすよぉ!」
こちらは天然だが。
「ありがたい。しかし
まだ、ユウジと他の三人との基本的な違いで分からないところがたくさんある。
「まぁ我々は洞窟の中で目も見えるし、腹も減らない。」
そんなところだろうな・・とユウジは感じていた。それなので
「俺は人間だ。そうはいかん。」
少し強めに主張した。
「
ローラが何でそんなこと言うの?というような不思議そうな顔をしている。
「どういうことだ?」
「私の力、ユウジに宿ってる。」
当然でしょ!分かってなかったの?という雰囲気だ。
ローラはスッと飛び立つと
「ここまで飛んでぇ!」
にこやかに手を振っていらっしゃる。
「いや、無理だろう。」
ローラさんそこは天井ですよ。
「いいから、飛んでみて!」
私に任せてみろと言わんばかりの勢い、手招きというより
ううんと・・・仕方がないので助走をつけて天井に向かって垂直に飛ぶ!どうだ!届く訳ない!
瞬間、カッとローラの瞳が開き、ユウジの踏み切った右足の下に緑の光の魔法陣ができて回転した。
ヴゥゥゥゥゥゥウウウウウウン
風が巻き起こりユウジの体は天井に向かって押し上げられる。
「わわっ」
「あいたっ!」
ついた手に激痛が走る。とんでもない勢いだ。天井に押し付けられる。顔まで。
「降りる?」
「おわーっ」
いきなり魔法陣が消えた。そして想像したとおりの自由落下。
この高さは足が折れなくても相当痛い。
すると、
ヴゥゥゥゥゥゥウウウウウウン
また足元で
足裏だけではない。ふくらはぎや膝の前にいくつもの小さな風車の魔法陣が点滅するように現れては消えて、自動的に体勢を崩さないように調整する。
落下の勢いは相殺されて、ユウジはゆっくり着地した。
「い、今のは?おわっ!」
びっくりしすぎて、後ろに転んだ時、尻と腰を包み込むようにまた光の風車がいくつも現れて、ゆっくり地面に着地させた。
「私の
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