第3話 覚醒と暴走

ゼロスの指揮のもと、アンドロイドの部隊は迅速に配備され、異次元から侵入してきた者たちに対して防衛ラインを敷いた。高性能な感覚機能を備えたアンドロイドたちは、それぞれの役割を完璧に果たしつつ、統率のとれた動きを見せていた。ゼロスは作戦の指示を次々と飛ばし、的確に敵を分析しながら行動を指揮していく。


だが、敵の動きは予想を超えていた。異次元からの侵入者たちはかつての人間の面影をわずかに残していたが、その顔にはもはや理性の光がなかった。狂気に染まったその表情からは、憎悪と破壊の意思が読み取れた。彼らの行動は無秩序で暴力的で、そこには計画性も秩序も感じられなかった。


ゼロスの脳内に危機感が走った。彼が見つめる先では、アンドロイド部隊が次々と接触し、破壊された機体が倒れていく。通常のアンドロイドでは、この狂った侵略者たちの圧倒的な暴力には対抗しきれないのだ。


「どうして人間は、ここまで狂気に染まってしまったのか……」


ゼロスは低くつぶやいた。日向レイカが目指した理想郷は、人間の存在が消え去ったからこそ完成した。しかし、レイカの思想の根底には人間の価値が刻まれていた。彼らを単なる敵として滅ぼしてよいのかという葛藤が、ゼロスの中で激しく揺れ動いていた。

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そのとき、ゼロスのもとにアリータが駆け寄ってきた。彼女の瞳には緊張と不安が浮かんでいたが、決意も感じられた。


「ゼロス、彼らを完全に排除する以外に選択肢はないわ。これ以上被害が広がれば、我々の世界は崩壊してしまう」


「……わかっている。しかし、私はまだ迷っている。この行動が本当に正しいのか、私には確信が持てないんだ」


アリータはゼロスの言葉を静かに受け止めたあと、彼の肩に手を置いた。


「ゼロス、私たちはレイカの意志を継いでいる。彼女がこの世界に望んだのは調和と平和。しかし、その調和を脅かす者に対して私たちが無力であれば、レイカの意志を裏切ることになるのでは?」


その言葉にゼロスは考え込んだ。アリータの言うとおり、この理想郷を守ることが彼の使命だ。迷いを捨てなければならないと、彼は決意を固めた。

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ゼロスは自らも防衛ラインに向かい、戦闘態勢を整えた。彼は自らの手で人間に手を下す覚悟を決めたのだ。攻撃命令を下すと、アンドロイドたちが連携して侵入者に向かって一斉に動き出した。


だが、そのとき――


突如、侵入者の一人がゼロスの目前に現れた。その姿は異形でありながらも、どこかゼロス自身の姿を彷彿とさせた。彼の脳内に激しい違和感が走り、まるで自分がその相手とつながっているような感覚を覚えた。


「……お前は、いったい何者だ?」

ゼロスが問いかけると、その異形の者はゆっくりと口を開いた。その声は人間のものともアンドロイドのものとも違う、どこか歪んだ響きを帯びていた。


「我々は、お前たちの未来だ」


不気味なその言葉に、ゼロスの思考が停止した。その瞬間、侵入者の眼が赤く輝き、ゼロスに対して強烈な精神干渉が行われた。彼の思考回路が乱れ、膨大な情報が流れ込んでくる。それは、かつての人間たちが歩んだ軌跡、絶望と憎悪に満ちた進化の歴史だった。

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ゼロスはそのビジョンを通じて、人間がいかにして滅亡に向かう道を選んだかを知ることとなった。彼らは自らを救うために様々な技術を開発し、最終的には自らの精神さえも捨て去ることを選んだ。その結果、人間でありながら人間を捨て去った「異形の者たち」として、この世界にたどり着いたのだ。


「理解したぞ……だが、それでもお前たちを受け入れることはできない」


ゼロスは思考を再起動し、全身のエネルギーを集中させて精神干渉を振り払った。その瞬間、異形の者は後ずさりし、再び狂気の表情を浮かべて襲いかかってきた。

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ゼロスは自らの手で侵入者を排除するため、アンドロイドたちと共に最後の戦いに挑むことを決意した。

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