砂の声

アルマダ

第1話 砂漠の中で

広大な砂漠が広がる中、無数の砂粒がひしめき合っていた。その一つ、一粒の砂粒が「スピリル」と名付けられた。彼は他の砂粒たちとは少し違った。スピリルは、自分の存在について疑問を抱くことがあった。「私は何のためにここにいるのだろう?」彼の心には、周囲の砂粒たちがただ流れに身を任せている姿が映っていた。彼らは、風の音に耳を傾けながら、運命に抗うことなく流されていた。


スピリルはその様子を見て、いつも考えていた。砂粒である自分が、何をすることができるのか。他の砂粒たちが特に気にすることのない運命を、彼はどうしても受け入れることができなかった。風が吹くたび、彼は空に舞い上がる自分の姿を思い描く。その中には、広い世界での冒険が待っていると信じていた。


ある日のこと、強い風が吹き荒れ、スピリルはふと目を閉じた。砂の中にいると、周囲の音が少しだけ違って聞こえたような気がした。彼は、風に乗って遠くから聞こえてくる音に耳を澄ませた。何かの声が、彼を呼んでいるような感覚を覚えた。それは、仲間たちが話している声や、遠くの動物たちの鳴き声ではなかった。まるで砂の中に眠る、古い記憶や物語が語りかけてくるようだった。


彼は自分の心に、ある決意が芽生え始めていることに気づいた。「私はこの砂漠を旅してみたい。未知の世界を知りたい」と。スピリルは、風の中でふわりと舞い上がり、周囲の砂粒たちが何も感じていないことに驚いた。彼の心の中で、冒険の火が静かに燃え上がっていた。


次の日、スピリルは砂漠の広がる景色を見つめながら決意を固めた。「私がこの砂漠を越えれば、何か新しいことが待っているかもしれない。私の声を聞いてくれる場所が、きっとどこかにあるはずだ」と心の中で繰り返した。


スピリルは自分の旅を始めるため、最初の一歩を踏み出す準備をした。周囲の砂粒たちは、彼が何をしようとしているのか全く理解できていない様子だったが、スピリルは気にしなかった。彼は風に乗って流れるのではなく、自らの意思で新たな道を切り開くことを選んだ。


それから数日後、スピリルは周囲の景色が変わり始めるのを感じた。風に流される砂粒の中で、彼はその道を歩むことに決めた。小さな障害物を乗り越え、少しずつ遠くへと進んでいく。彼の心の中には、不安と期待が入り混じっていた。新しい出会いや発見が待っているのではないかという思いが、彼を前へと進ませた。


スピリルは、自分が旅する中でどのような仲間に出会うのか、どんな物語を聞くことができるのか、想像するだけで心が躍った。彼はただの砂粒ではなく、自分自身の物語を紡ぐ主人公になることを夢見ていた。


旅の準備が整った時、スピリルは強い風を感じた。彼はその風に身を任せ、砂漠の旅へと飛び出した。未知の世界が彼を待っている。新しい仲間、驚き、そして大切な思い出が待っている。そのすべてを求めて、彼は広がる砂漠の彼方へと進んでいった。


彼の心の中には、冒険の始まりを祝う声が響いていた。スピリルは、これからどんな出会いが待っているのか、何を学ぶのかを楽しみにしながら、砂漠を駆け抜けていった。


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