紺青のグレンセラ
比世 朔
序章
グレンセラは古都の面影が遺っていた。
格調のある建物の数々。そこは人の気配を全く感じないほど静寂に満たされている。堅固な門楼を通り過ぎると、悠然と
グレンセラ城の広大な敷地内には、幾つも宮殿が在る。歴代の君主達が愛する妻や子の為に建てさせたものだ。
その中でも、一際壮麗な離宮がふたつ。
正妃と嫡子が住まうサングリアル宮。そして、丘の上に建つクラレント宮。
対照的に、美しさが
それは、凍えるような寒さが続く冬のこと。深い雪が音を封じていた。見渡す限り、そこはまさに銀世界。夜空には蒼白い月がぼんやりと
夜空の色を映し出すかのように、王子は澄んだ青色を瞳に
成長した王子は、
王子は空を
その世界は、突如として終わりを告げた。
空は変わらぬ青を湛え、地上は血の海と化した。一面を真っ赤に染め上げたのは、王子の剣。その赤は、今目の前で無様に死んでいる男達の血潮だった。
アルスノ、というのが王子の名だ。
アルスノは生まれてから今まで、ずっと命を狙われてきた。
総て、
今宵、叛乱の夜空。美しい空とは裏腹に、地上は阿鼻叫喚の光景が広がっていた。至る所で切り裂かれる身体。流れる鮮血。数多の人間が憎しみと失望を瞳に映しつつ、絶命していった。
アルスノは
「青い」
これは、一人の王子の運命を辿る物語である。
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